管理内容を見直して経費節減と清潔感の維持を実現
収益を改善するためには管理コストの見直しは有効な手段ですが、単純に額を減らせばよいというものではありません。管理内容を見直した上で、それに見合った額に調整していくという考えがないと、費用節約がビルの劣化促進につながるという逆効果になることもあり得るからです。
実際、清掃費用も含めた管理費用を節約した結果、荒れ放題になってしまうビルは少なくありません。トイレが汚れたままになり、自転車が放置され、エントランスや玄関前にモノが置かれ、なかにはそこに張り紙をするテナントが出て・・・。
ゴミはひとつ捨てられていると、そこにはゴミを捨ててよいと思われるのか、加速度的に増えていくといいますが、同じような状況がビル全体で起こり始めるのです。特にオーナーがビルに居住しており、管理会社を間に挟んでいない場合には、なかなか強く注意することもできず、何となく許諾しているように思われてしまうこともあります。そうなると、もう収拾がつきません。
こうした事態を招かないためには、たとえば、清掃費用をきちんと洗い出し、費用ごとの要不要を仕分けし、見直すような作業が必要です。具体的には、トイレ1箇所に何分の清掃を週に何度行えば清潔さが保たれるかといった細かいところからすべてを見直す作業です。
また、費用削減のためには清掃、テナント対応などと作業を分離発注することが有効ですが、すべての作業を自分でチェックできないのであれば、一括発注のほうが効率的です。自分だけでは手が回らなくなり、日常的な作業に支障が出るようになってしまうのであれば、多少費用はかかっても安心して任せられる業者にすべてを任せてしまったほうが最終的には安くつくからです。
ただし、任せるといっても、任せっきりは禁物。きちんと契約どおりに作業が実施されているかを定期的にチェックすることも大事です。単に施工のみ、掃除のみを請け負う会社の場合、作業内容で手抜きをしても費用は変わりませんから、放置しておくとだんだんレベルが下がる例もあるのです。
物件ごとに専任の担当者を決めてクレームに備える
クレーム原因の大半が入居者間の摩擦である住宅と違い、ビルの場合のクレームは設備面の故障などが大半です。そのため、ある種必然ともいえるわけですが、だからといって、クレームが起きてそのたびに慌てているようでは効率的な経営とはいえません。よくあるクレームについてはあらかじめ備えておくことが大事です。
たとえば、冷暖房。通常、空調設備は築15年ほども経過すると故障が発生し始め、17〜18年経過後には故障が多くなり、さらに20年程度経つと交換が必要になるものです。そのため、古いビルでは夏の暑い時期に冷房の効きが悪いとクレームになることが少なくありません。それに備え、当社では夏前に冷暖房設備をオーバーホール、クレームを未然に防ぐようにしています。また、冷暖房効率を高めるペアガラスの導入を促進していることも、クレーム減少に寄与しています。
玄関前の滑り止めもクレームに対する予防的な措置のひとつ。「雨が降って玄関先が滑りやすい、なんとかしてくれ」、あるいは「滑って怪我をしたから慰謝料を要求したい」などといった例もありますから、滑りそうだと思うビルにはあらかじめ滑り止めをつけるようにすることも頭に入れておきましょう。こうすれば、事故が起きて問題になることがなくなります。
もうひとつ、当社では物件ごとに専任の担当者を決め、テナントからのクレームに即応できる体制にしています。何か問題があるたびに違う担当者が出てくるのでは、事情説明に時間がかかり、ただでさえ問題発生でイライラしているテナントに無用の負担をかけてしまうことになります。最悪の場合には、それが退去の引き金にもなりかねませんから、クレーム対応はできるだけ迅速に。それが当社の体制です。
もちろん、過去のクレームについては詳細に記録に残し、社員全員がすぐに参照できるようにもしてあります。こうした積み重ねがあれば、同じクレームが続いた場合には、次のクレーム発生前に予防的措置がとれますから、前向きにクレームに対処できるというわけです。