事実は「現場」にこそ存在する
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」
これは、映画『踊る大捜査線』で、織田裕二さん演じる青島俊作巡査部長の名セリフです。事件は現場で起こっているのに、幹部は会議室で会議ばかりしている。果たして、会議室で事件は解決するのでしょうか。
事実を正しく把握しない限り、事件の糸口は見つかりません。刑事ドラマで、「現場100回」という言葉をよく聞きます。捜査が行き詰まったときに、何かの手掛かり、遺留品、捜査のヒントをつかむため、何度も犯行現場で調査する必要があり、現場にこそ事実が存在するということです。
現場との信頼関係がトラブルを未然に防ぐ
さて、私たちの職場で起こるトラブルを考えてみましょう。刑事ドラマでいう「事件」を「トラブル」に置き換えてみれば、共通する考えが存在することに気付きます。とかく私たちは、トラブルが起こると、会議室で議論し、その解決に当たることがよくあります。
しかし、それでは事実の把握ができません。事件同様、トラブルも会議室で起こったわけではありません。トラブルが起こった現場をよく観察することが必要です。それで初めて、原因究明のスタートラインに立つことができます。
私は、国内・海外で多くの現場改善を実行し、その指導に当たってきました。そのたびに、「現場」の大切さについて、次のように説明しています。
①「現場」=「現」+「場」で、「現」は実現すること、「場」は場所のこと。
②すなわち、私たちが立案した仕組みや手順を「実現」する「場所」が現場である。
③現場という意味には、場所だけでなく、そこで働いている人たちも含まれる。
④現場は、製造現場に限らず、実務を実行しているところすべてが現場である。たとえば、物流の現場は倉庫や配送センター、設計の現場は、設計図面を作成しているところ。
三現主義という言葉があります。これは、「現場」で、「現物」を見て、「現実」を把握するという意味です。つまり、「現」が3つあるので、命名されました。私たちは常に現場を尊重する姿勢を持つことが大切です。
しかしそれは、現場の言いなりになれということではありません。現場が間違っていることはしっかりと正すべきですが、常に現場との信頼関係がトラブルの未然防止につながります。