トラブルを防ぐことで、生産性は100%にできる
業務上のトラブルを未然に防止することで仕事の生産性を上げることができ、残業削減につながります。さらに、トラブル処理から解放されることで、社員のモチベーションがアップします。
昨今、政府主導で進められている働き方改革の取り組みでは、時間外労働削減の視点で語られることが多いですが、職場に未然防止の考え方を導入することで、業務改革が進み、企業業績の向上が期待できます。
<生産性とは?>
本来「生産性」とは、投入した資源(時間)に対して、得られた成果(利益)の割合、つまり「成果」÷「投入した資源」のことです。ただ、それは企業の売り上げや利益向上に直結する「本来(コア)業務」に関する生産性の定義です。
現実には、「本来業務」以外の業務、すなわち、顧客クレームや業務上のミスの後始末等のトラブル処理に追われており、利益に直結する「本来業務」に入れない事態が起きています。
それを踏まえ、改めて「生産性」を定義しなおすと、ある期間の実働時間(例えば1週間)に対して、本来業務に当てられた時間の割合、つまり「本来業務の時間」÷「ある期間の実働時間」となります。
生産性を上げるためには、トラブル処理の時間を最小化しなければなりません。トラブル処理がゼロであれば、生産性は100%となります。
トラブルの未然防止を実行すると、トラブルがなくなるだけでなく、本来業務の効率を高めることにもつながり、業務改革を実現できます。では、なぜトラブルが起こるのでしょうか。
業務上トラブルの原因…ほとんどはヒューマンエラー
ミスとは、錯覚、思い違い、勘違い、失念のことです。人間はミスをする動物で、ミスを減らすことはできても、ゼロにはなりません。
「未然防止」の考え方をミス発生未然防止対策あり未然防止対策なしトラブルゼロトラブル発生導入すれば、ミスしても実害のあるトラブルをゼロにすることができます。ここでいう「未然防止」には誰でもできる高い再現性があります。
<「未然防止」実現の3ステップ>
●第1ステップ:緊急対応(トラブル発生時、迅速に解決する)
これは初動が大切で、トラブル発生に気付くこと、トラブルを隠さず、即報告すること。そのためには、トラブルの隠ぺいを生むミスの当事者への叱責は絶対に避けるべきです。そして、初動を誤らないために、トラブルの事実を正しく把握することが肝要です。
●第2ステップ:再発防止(同じトラブルの再発を防止する)
トラブルが発生すると犯人捜しが始まることがあります。私たちがやるべきことは、原因探しです。その原因は、表面的なものではなく、根本原因を追究することが必要です。
例えば、確認せず、間違った書類を顧客に送付してしまったとき、確認不足だけで終わるのではなく、なぜ確認しなかったのか、なぜ確認できなかったのかという根本原因を追究することで、再発防止の精度が上がります。
また、ミスをした当事者を正当化して、当人の本音を聞くことが、根本原因の追究に役立ちます。そして、再発防止対策実施後は、その効果を検証して、対策のやりっ放しを避けることも必要です。
●第3ステップ:未然防止(再発防止の結果から、将来のリスクに気付いて対策し、リスクを回避する)
「再発防止」と「未然防止」は概念が異なります。過去発生したトラブルと全く同じことは、将来において起こりません。だから、「再発防止」だけでは不十分なのです。
また、未然防止は先行投資です。トラブルが起こってから対処するより、未然防止のコストを低く抑えることができます。『事が起こってからでは遅い』、ここに「未然防止」の価値があります。将来のリスクに気付くために、身近なヒヤリハット体験(トラブルの前兆)を振り返ることが有効です。
さらに、過去の失敗事例から将来のリスクに気付くことができます。例えば、醤油とソースの取り違いという過去の失敗から、調味料という属性を外して「取り違い」だけに着目し(一般化)、事務作業等の「取り違い」のリスクを想定できます。日頃から訓練を積めば、誰でもリスクに気付くことが可能です。