会議室で聞くトラブル報告では、誤解が生じる可能性も
トラブルとは何か、その事実を正しく把握することが必要です。これを間違えると、誤ったトラブル対応となりますし、その後の原因究明に影響します。つまり、トラブルの事実をきちんと把握するという初動がきわめて大切です。
トラブルの事実を把握するためには、それが起こった現場で確認すべきです。現場から離れた会議室でトラブルの報告を聞くと、誤解が生じるかもしれません。
「現場を確認しなかった」ことで発生したトラブル事例
ここである事例を紹介します。
このユニフォームレンタル会社では、顧客へユニフォームを貸し出し、定期的にそのユニフォームを使用後に回収し、洗濯して再度顧客に届けています。
ある日、営業担当者は顧客からクレームの電話を受けました。その内容は「間違ったユニフォームが届けられた」というものでした。担当者は配送センターとのメール交信情報だけで判断し、「顧客ラベルの間違いで誤配送された」と上司の課長に報告しました(以下の図表を参照)。
[図表]クレーム情報
しかし、課長はその報告の裏付けをとるため、担当者とともに、「現場」である配送センターに出向きました。そこで誤配送された現品を自分の目で見て、次のことを確認しました。
●顧客ラベルは正しいこと。
●中身の商品が違っていること(図表参照)。
この時点で、現場を確認しなかった担当者の報告が間違っていたことになります。つまり、トラブルの事実を正しく把握していなかったわけです。
トラブルの事実を正しく把握していないと、その後の対応を間違えるかもしれません。この例でいうなら、顧客に間違って届けた商品だけでなく、在庫品も中身の商品が違っている可能性があります。もしそうなら、同じトラブルを繰り返すことになります。
トラブルの事実が、
●顧客ラベルが間違っていたのか。
●顧客ラベルが正しくて、中身の商品が違っていたのか。
によっては、その後始末だけでなく原因も対策も異なってきます。
さらに、今回のトラブルの事実が、「顧客ラベルが正しくて、中身の商品が違っていた」のなら、もう1つ掘り下げて、顧客ラベルが正しいにもかかわらず、なぜ間違った商品が配送されたかを調べる必要があります。
ここで、課長は引き続き、現場で顧客が注文した商品Aと、間違って届けられた商品Bを比較しました。その結果、商品AとBが非常に似通っている事実に気付きました。この事実から、正しく原因を追究し、再発防止対策がうまく実行されるでしょう。
もし、この課長が現場に行かず、会議室で担当者の報告だけで判断していたなら、間違った対策になっていたことでしょう。正しくトラブルを解決するためには、現場でトラブルの事実を把握する必要があります。