オーナーの権利が強いが、入居者とのトラブルも…
不動産を所有しているオーナーの皆さんは、誰しも不動産管理の重要性を十分に理解していると思います。自ら管理したり、業者に管理を任せたり・・・と、方法は様々ですが、いずれにしろ、不動産を運用して行く上では非常に重要な業務であることに変わりありません。
特に客付に関しては、ほとんどのオーナーは不動産業者に管理を委託しているのではないでしょうか。委託先の業者の管理が疎かになると、空室が続いたり、家賃の未収が発生したり、その他さまざまな入居者とのトラブルに発展することもあります。しっかりした管理を続けていくことが、不動産投資では重要なのです。
日本では、不動産管理を中心に行っている不動産会社は多く、市場としても確立されています。また、業者の規模も様々です。では、ベトナムではどうかというと、今まではベトナム人オーナーに対する管理業務が多く、外資業者(合弁含む)やベトナムの地場業者が業務を行っていました。
業務内容としては、客付をメインにした業者が多く、物件の管理はオーナーが自ら行うケースが多いのです。日本と比べて貸側(オーナー)の権利が強いので、一方的な解約や賃料値上げ等々入居者とのトラブルも少なくはありません。
物件の選択肢の増加で、業者の健全化にも期待
ベトナム在住の日本人で、業者を挟まず直接ベトナム人オーナーと賃貸契約を結んだことがある人は、以下のような事例を経験されている方も多いのでないでしょうか。
①契約期間中でも客付を行い、既存の入居者より賃料条件が良ければ平気で途中解約を行う(この場合の解約の言い訳として最も多いのが「物件を転売する」というもの)
②留守中に勝手に部屋の内覧を行う
③賃貸物件のオーナーではなく、入居者(ベトナム人)が勝手に客付を行い、賃貸している(オーナーが知らないうちにサブリース)
④デポジット金を何かと理由をつけて返したがらない
⑤住居の備付け備品の故障や取替などが入居者負担、もしくは対応してもらえない
⑥雨漏り、建物構造物の破損などの修理対応が遅れる、もしくは対応してもらえない
日本ではありえないことですが、ベトナム人オーナーとの間ではよくある話です。現在は不動産会社を通しての賃貸契約が多いので、以前よりは入居者がオーナーと直接絡むトラブルは減っていますが、その分、不動産業者が苦慮している話をよく聞きます。そのため、客付だけ行い、物件管理は行わない業者も少なくありません。
このように、日本では考えられないことが多くあるので、信頼のおける不動産業者を利用することをお勧めします。近年は日系の不動産会社も増えており、日本的なサービスを提供する業者も増えてきましたが、「日本並み」を求めてしまうと、逆にストレスになることもあるでしょう。まだまだ途上中であるベトナムを、広い心でを受け入れてほしいと思います。
昨年末から外国人オーナー(日本人含む)の本格的な物件引渡が始まり、賃貸物件が市場に出始めています。今まではベトナム人オーナーの賃貸物件の中からしか選べませんでしたが、今後は外国人オーナーの賃貸物件も選ぶことが可能です。選択肢が増えるのは、非常に喜ばしいことです。
選択肢が増えれば、前述したようなベトナム人オーナーは淘汰され、健全なスタイルに変わっていくことでしょう。
余談ですが、ベトナム人とのビジネス、特に交渉事は、必ず一度「背中を向ける(Noと伝える)」ことが必要です。相手が追って来たら、当然ですが、こちらの有利な条件で交渉を進める事ができます。ただし、追ってこなかった場合は別の相手に切り替えられるよう、並行して3か所くらいと同時に交渉を続けるくらいでないと、すぐに足元を見られ、相手有利な条件で進められてしまいますから、注意してください。
今後は、貸側(オーナー)としても、委託先の不動産会社の管理能力次第で大きく収益が変化することが予想されます。客付も大切ですが、オーナーに代わってベトナム国内での管理運営をしっかり行うのはもちろんのこと、ベトナムでの法的処理や税務処理等にしっかりと対応(若しくはアドバイス)でき、ベトナム人オーナーとの差別化を図りつつ、日本人オーナーの有利性や管理の明確化を打ち出せる管理会社が必要になるといえるでしょう。