民法上「共有」はあくまでも例外扱い
前回の続きです。
前述の相続のケースで、相続した不動産が相続人の各自の相続分に応じて共有になるのは、共同相続の効力について定めた民法898条が「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めているためです。
このように、共有に関しては法律でルールが定められていますが、基本的に民法上では、1つのモノに対しては1つの所有権しかない状態を原則(一物一権主義)とする考えを採用しており、共有はあくまで例外とみなされています。そのため、共有関係の解消を促すことを目的とした規定も用意されています。
具体的には、共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。土地であれば分筆する、それが難しい場合は、不動産を売却してその売却代金を分割する、といった方法があります。この分割請求の効果として、共有状態は解消されて共有関係が終了します。つまり、各共有者は分割の結果、自己の取得した部分につき単独所有者となります。
なお、共有者全員で、「分割をしない」という不分割の契約(不分割特約)を結ぶこともできます。ただし、不分割の期間は5年を超えることはできません(5年経った後に不分割特約の更新をすることは可能です)。
「現物分割」「代金分割」「代償分割・価格賠償」
共有者が分割を請求した場合、(1)協議による分割、もしくは(2)裁判による分割が行われることになります。前者は共有者の話し合いによって、後者では裁判所の力を借りて分割が行われます。
また、分割の方法としては、以下のように①現物分割、②代金分割、③代償分割・価格賠償という3つの選択肢があります。
①現物分割
共有物自体を持分に応じてそれぞれの共有者に分ける。
②代金分割
共有物を売却してその代金を共有者に分配する。
③代償分割・価格賠償
共有者の1人が共有物を取得し、他の共有者に持分に応じた金銭を支払う。
(2)裁判による分割が行われる場合には、原則として①現物分割の形になりますが、分割が不可能、または目的物の価格が減少するおそれがあるときは、競売が実行され共有者に代金が分配されます。
また、共有物に対して権利を有する者(賃借人、担保物権者など)や共有者の債権者は、自己の費用で分割の手続きに参加することができます。共有者の債権者がこの参加を求める請求をしているにもかかわらず、参加させずに分割を実施した場合には、分割結果は無効となります。