中国子会社の「毎月の損益」を把握していなかったB社
前回の続きです。B社では、今までこのようなデータなどを取ったことはありませんでしたが、今回のデータ収集によって、以下のようなことが判明しました。
●中国の製造子会社は毎月粗利段階で赤字であり、赤字補填のために日本の親会社が毎月送金している。その貸付金の残高は1億円を超える。
●営業部長をはじめ営業部のスタッフは、中国子会社の毎月の損益の状況をこれまで全く知らされておらず、今回初めてその実態を知ることとなった。
●営業部のスタッフは、一括で受注した中でも利益の出にくい仕事を優先的に中国の子会社に依頼しており、その加工価格の決定権は各営業マンにあった。本来ならば利益の出ない仕事でも、中国子会社に低い価格で加工依頼をかけていた。中国子会社では、低い受注価格は親会社の決定だからと素直に受注していたが、多くが粗利段階で赤字となっている。
●日本本社単体の粗利率は28%(3カ月平均)だが、中国の製造子会社を含めた連結ベースでは20%を切ることが分かった。製造メーカーで粗利率が20%を切ることは致命的である。
●営業マンによると、自社工場を使わずに外注先を使う理由は2つあった。一つは当該加工が自社ではできないということであり、他方は自社で加工するよりも外注したほうが安いからであった。ところが本社工場長に確認したところ、多くが本社及び中国の工場で加工可能だと分かった。また、外注したほうが安いという理由も、自社工場の製造固定費の時間チャージレートを考えると外注のほうが安いという判断だった。
●これまで全営業マンは社長から見積もりの仕方について指導を受けたことがなかった。
●日本の自社工場の稼働率は50%程度と低く、工場長の話によるとここ3年間で徐々に稼働率が落ちてきたようである。逆に中国の工場稼働率は100%(3交代勤務24時間稼働)。このような中で日本から飛び込みの加工依頼が入り、その仕事を優先するよう各営業マンから指示が入るため、現地で受注した仕事は後回しにならざるを得ない。
●営業マンのほぼ全員が、全ての加工品で利益を確保しなければならないと考えていた。一括受注にもかかわらず、各加工で利益を出す必要があると考えていた。
中国子会社の納期遅れが常態化していることも判明
●本社工場も中国子会社も、営業マンの見積額の算定がビジネスの肝になっているが、しっかり見積もろうとすると、当然時間がかかる。特に中国子会社では見積作業で取引フローが中断されてしまっており、営業マンの机には顧客からの見積依頼書が山のように積み上がっていて、見積額の回答にかなりの時間がかかっていた。
●中国子会社では納期遅れが頻発。3カ月の納期遵守率を見ると3%程度であり、ほぼ全ての仕事で納期が守れないという異常事態が判明したが、中国子会社は設立以来ずっとこのような状態であった。
●中国子会社では納期遅れが常態化しているので、製造部から営業部への納期回答、営業部から顧客への納期回答という2段階で安全余裕期間(バッファー)を織り込んでしまっていた。前者で約5日、後者で約5日、合計10日間のバッファーを持たせていた(バッファーを織り込んでもさらに遅れるということである)。
●中国子会社の工場では、特定の工程の前で仕掛品の滞留が多く発生していた。理由は、各々の工程を構成する機械設備の生産キャパシティのバランス(同期)を考慮することなく設備投資を実施したためである。
このような追加情報が入った場合に、すぐに適切な処置を施せるでしょうか。ロジックだけで解決できる世界の問題ですから、何ら難しくはないのです。
この話は次回に続きます。