中国子会社からの「仕入価格」の値上げ等を提案
前回の続きです。この時、私が出した指示は以下の通りです。
●B社から中国子会社への「貸付金」の実態は仕入代金の補填である。つまり仕入代金に他ならないので、取引を実態に合わせるために、中国子会社からの仕入価格を値上げすること。現地税務当局の視点で考えれば、粗利率は少なくとも20%以上が望ましい。
●営業マンは、中国子会社をB社とは全く関係のない別会社(外注先)としか考えておらず、グループ企業であるという「連結」の概念がない。日本の工場や他の外注先では利益が出ないと考えられる加工を全て任せられる「都合の良い加工先」としての位置付けしかないため、中国の製造子会社を使った「見せかけの利益」を作ってしまう。低い価格で加工依頼をかけてB社単体で利益が確保できても、連結ベースでは十分な利益が確保できていない。今後は、中国子会社からの見積額を無視することなく、中国子会社の粗利を20%程度残すことを目安に加工依頼をかけることを心掛ける。
加工の多くを自社工場へ回し、稼働率と粗利益をアップ
●中国の製造子会社を「都合の良い加工先」と考えるため、日本からの加工依頼が集中し、中国子会社の生産キャパが逼迫する事態が生じていた。これだけの稼働率を誇りながら粗利段階で赤字というのは異常である。また、日本からの加工依頼を優先させるために生産ラインの同期を失わせてしまっていた。緊急を要する加工品以外は無理な加工の差し込みはしないようにする。
●日本の本社工場の製造固定費の時間チャージを考えると、赤字になる加工は全て外注に出すという営業マンの判断は間違いである。製造固定費の時間チャージも考慮した全部原価ベースの原価より低い受注価格であっても、材料費等の変動費の総額を超えているのであれば、固定費の一部が回収できる。そのため外注加工ではなく積極的に国内本社工場へ加工を回すべきである。ここ3年間、本社工場の稼働率が低下傾向にあるとの工場長の話であったが、外注先へ回していた加工の多くを自社工場へ回すことで稼働率は上がり、固定費の回収が進むため粗利益は確実に増加する。
●営業マンの見積もり能力に大きな疑義がある。非常に難しい見積もりであるが、B社のビジネスの肝なので、社長の持つノウハウを教え伝えることが中長期的には必須。連結ベースの粗利率が20%を切っているため、社長以外の営業マンの価格設定が低過ぎる可能性が高い。当面は全ての営業マンの見積額を社長自らがチェックし、精度向上に組織として取り組むことが必要である。
この話は次回に続きます。