前回は、シニア人材特有の問題点を紹介しました。今回からは、「シニア人材の雇用」で起きやすいトラブルについて見ていきましょう。

シニア人材のトラブルには「年齢特有」の傾向が・・・

シニア人材と現役社員との間でトラブルが多いという話をよく耳にします。もちろん、シニア人材に限らず、どの世代の社員でもトラブルは起きるでしょう。シニア人材の場合、年齢的に特有の傾向があり、それさえ理解しておけば、たとえトラブルが起きても早めに対処できます。

 

今回からは、シニア人材側の問題点について、ご紹介します。

過去の実績にしがみつき、熱心に仕事をしない例も

シニア人材の問題点(1)過去の実績、栄光にしがみつきたがる

 

シニア人材を採用するときに障害になるのが、過去の実績や栄光にしがみつきたがる人がいることです。これは経験が豊富であることの裏返しともいえるのですが、過去の実績を過剰にアピールするばかりで、目の前のことに取り組まなくなってしまう傾向があります。

 

「俺が若いときはこうだった」「こんな仕事をして表彰された」と昔の話ばかりするのは、現実から目をそらして、今の自分を受け入れられていないことになります。あるいは、「自分をもっと評価してほしい」という気持ちが強いのでしょう。

 

もちろん、過去の成功があるのは素晴らしいことで、プライドを持つのも大切です。それを否定してしまうと、その人の人生そのものを否定してしまうことにもなりかねませんし、それは私の望むところではありません。

 

しかし、過去の栄光にしがみついてばかりいては仕事ができませんから、相手を尊重しつつも、気持ちを切り替えて前に進んでもらえるようにすることが、企業側とシニア側の双方に求められます。

 

一芸に秀でるものは多芸に通ずという言葉がありますが、何かに秀でようと努力をしたことがある人は、どうすれば上達できるかというコツをつかんでいます。そのため、新しいことを始めても、比較的早く上達できるのです。

 

「営業で3年間もナンバー1だったという実績のあるあなたなら、営業職を知り尽くしているのだから、営業事務でも力を発揮できるのではないか。営業マンが何を望んでいるのかが、誰よりも分かるのではないか」と相手の実績を認めつつ、今の仕事に注力できるように導けば、目の前のことに取り組むことができるようになります。

 

一流のスポーツ選手が勝負の勝ち方を知っているように、ビジネスでも一度成功した経験のある人は、成功の仕方を知っています。

 

プライドを尊重しつつ、「一つの成功をした人は、他の分野でも成功できる」という点を分かってもらえれば、過去の栄光にしがみつくこともなく、新しい場所でも力を発揮できるでしょう。

 

過去の栄光にこだわりがちなシニア人材には、例えば1日のうちに10%ぐらいは過去を振り返ってもいいと思いますが、90%はこれからのことを考えていただきたいところです。明日、明後日のことだけでなく、2年後、3年後のことも考えてほしいというのが私の希望です。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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