「シニア人材の活用=老後の楽しみの提供」ではない…
前回の続きです。
シニア人材の問題点(5)ハングリー精神がない
シニア人材のなかには「第二の人生」という言い方をする人がいますが、私はそういう方は仕事への取り組み方がどこか趣味の延長になっているような気がします。定年前と同じように責任感を持ち、「何が何でもこの仕事を成功させよう」とする熱意が欠けているように感じるのです。
私にしてみれば、今の仕事は第二の人生ではありませんし、今が現役人生です。
そもそも今の仕事を第二の人生だと考えるのは、クライアントに対して失礼な話です。クライアントの立場に立てば、第二の人生だからといっていい加減な仕事をされては困るのです。
同じ理由で、「現役時代」というのも使ってほしくない言葉です。
「私が現役のときは……」と言うと、相手は「じゃあ、今は現役ではないのなら、なんですか? 現役を退いたってことは、遊びでやっているんですか?」と感じる可能性もあります。今の仕事を真剣にやっていないのかと思われても仕方がないでしょう。それではクライアントに失礼ですから、私は決して言ってほしくないと思います。
シニア人材を活用するのは、その人の老後の楽しみを提供するためではありません。その点をシニア人材の方にまず理解してもらわないと、仕事はうまくいかないでしょう。
経済的な余裕があり、仕事を最優先に考えないシニア
仕事に対する姿勢に関しては、報酬にはこだわらないところが逆に弱みになっている部分もあります。
私が採用してきたシニア人材は経済的に余裕がある方が多いので、ガツガツ仕事をするというよりは自分の空いている時間に仕事を入れるというスタンスの方が大半です。要するにハングリー精神がないのです。
だから、家族旅行や町内会の集まりがあるときは、そちらを優先することもあります。要は、仕事よりプライベートが大事なのです。
その日に打ち合わせが入っていても、「孫の面倒をみなくちゃならなくなった」という理由で突然休むこともあります。そうすると、代役が出ていかなくてはなりません。
もちろん、若手社員も真面目な人ばかりではなく、ずる休みするような人はいますが、その場合も「自分の都合で休むのは気まずい」という思いはあるから、「親戚に不幸があって……」のように理由を考えるでしょう。シニア人材の場合は、堂々とプライベートを理由に挙げるので、雇う側は面食らうかもしれません。
シニア人材は経済的に余裕があるから、仕事を最優先とは考えないのです。したがって、あえてシニア人材を採用する企業としては、そういう弱みを理解したうえで受け入れるというスタンスを取らなければなりません。
人件費は抑えられるのですから、通常よりも人数を増やして、1人でできる仕事を数人でシェアするワークシェアリングのような方法も導入できます。そうすれば、突然誰かが抜けても、ほかの人で穴埋めできるのです。
また、時代は仕事を第一に考えるべきだという流れから変わってきています。
仕事や収入はそこそこあれば十分で、家族を大事にして人生を充実させるほうが大事という価値観は、徐々に若い世代にも広がっています。社会全体の風潮がそういうふうに変われば、ハングリー精神のなさもシニア人材の弱みとはいえなくなるでしょう。
この話は次回に続きます。