前回は、企業の「経営理念」が業績に与える影響について、具体的な数字を例に説明しました。今回は、会社の強み・弱みを洗い出す「SWOT分析」とは何かを見ていきます。

会社の内部環境分析を、外部環境分析と組み合わせる

経営目標や経営理念を考える際には、ぜひ活用すべき分析法があります。それが「SWOT分析」です。

 

SWOTとは強み(Strengths)、弱み(Weakness)、機会(Oppotunities)、脅威(Threats)の頭文字をとったもので、会社の外部環境や内部環境をこの4つのカテゴリーで要因分析し、あなたの会社の抱える課題と、今後の改善策の策定に役立てるものです。

 

具体的には、あなたの会社の内部環境分析(強み/弱みの分析)を徹底的に炙り出し、それを外部環境分析(機会/脅威の分析)と組み合わせることで、自ずと進むべき道が見えてきます。

 

たとえばA社という製造業のSWOT分析を例として見てみましょう。

 

A社は製造業を営む会社で、元請企業から仕事を請け負い、自動車の切削工具や治具などの製造を行っています。元請となる企業とは、創業当初からつきあいがあり、取引先を見てみるとその元請の関連企業がほとんどです。

 

長年のつきあいから納期やコスト削減などの取り組みに関して、絶大なる信頼を得ていたのですが、近年その元請企業が海外進出をはじめました。これによって、今までA社が請けていた仕事の一部は、人件費の安いアジア諸国の工場で内製化されることが多くなったといいます。

 

さらに間が悪いことに、今後の元請企業との取引の拡大を目指して、最新の設備を導入した工場を建設したばかりだったのです。

 

こういった状況を、ひとつずつSWOT分析してみます。

 

SWOT分析をする際に大切になることは、まず実際に紙に書き出してみることです。頭のなかで思い浮かべているだけではなかなか整理がつかず、客観的に会社のことを見ることは困難です。見える化して、一目でわかるようにすることが正確な判断を助けます。

 

[図表1]SWOT分析

弱みの発見に有効な「社員へのヒアリング」

内部環境要因については社員にヒアリングをしてみるのも効果的です。現場レベルからの声は会社の内情をよく反映し、実に的を射たものであることが多いからです。特に「弱み」を見つける際には、このヒアリングは欠かせないデータになります。

 

外部環境分析については、大きく2つに分けることができます。それぞれは「経済、技術、政治、法律、社会、文化」というようなマクロ視点での要因と、「顧客、競合他社、流通業者、供給業者」というようなミクロ環境要因です。

 

この2つの要因が必要となるのは、マクロとミクロの双方の要因がどのように変化してきたか、そして、今後どのように変化していくと考えられるかを知るためです。これらを明らかにしないままでは機会も脅威も正確に分析できません。

 

とはいえ、こうした分析を行うにはさまざまな情報を収集しなければなりません。つまり、経営者は日頃から多方面にアンテナを張って情報収集をしておかなければならないのです。

 

[図表2]マクロ環境分析(PEST分析)

本連載は、2017年3月23日刊行の書籍『「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

小林 優一

幻冬舎メディアコンサルティング

リーマンショック、アベノミクスを経た現在でも、中小企業は生き残りをかけた厳しい時代を迎えています。このまま手をこまねいていれば倒産・廃業を回避することはできません。しかし、多くの零細企業経営者・個人事業主は、何…

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