前回は、アメリカで820万世帯の賃貸需要を生んだ「2つのトレンド」を解説しました。今回は、米国不動産投資で注目の「オースティン」「コーパス・クリスティ」について見ていきます。

築100年の建物も取引される米国不動産市場

アメリカの不動産に投資するメリットを語る上で、「減価償却」を忘れるわけにはいきません。


日本の木造住宅は、築30〜40年ともなると建物価値がゼロになるケースがほとんどです。一方、アメリカでは中古物件を長く使用することが一般的であることから、築100年の建物でも流動性があり、マーケットで普通に取引されています。


築30年程度の建物の場合、物件価格に占める建物価格の割合が70〜80%であることも少なくありません。


 

減価償却年数については、日本国内での課税には日本の税制にのっとった耐用年数が適用されるため、取得後、収益物件として長期間運用できる物件にもかかわらず、築22年を超えた木造住宅は4年(22年×20%=4.4年→端数切り捨てで4年)で減価償却が可能となるのです。


この減価償却については、ケースを交え、本書『究極の海外不動産投資』の第5章で詳しく解説します。

シェールガスの恩恵で人口も雇用も増加傾向に

テキサス州には私も投資していますが、注目されるのは、オースティンとコーパス・クリスティという2つの都市です。オースティンは、人口増加率が高いことに加え、全人口に対する大卒者の比率が42%程度と、テキサス州の中でも住民の学歴が非常に高いことが特徴です。州都であり、市の中心部にテキサス大学があることでも知られています。


また最近では、「シリコンヒルズ」と呼ばれていて、IT関連企業の中心地にもなりつつあります。有名な企業としては、アップルのカスタマーセンターや、インテルやAMD、サムスンなども、大きな工場を設立し、稼働させています。

 

[図表1]テキサスの概要

次に、コーパス・クリスティですが、こちらは人口30万人程度の小さな街です。ただこの近くには、イーグル・フォード・シェルという大きなシェル層があります。シェル層から掘り出されたシェールガスは、ガス状のままで運び出すことはできないので、それを一度、液化する必要があります。コーパス・クリスティは、全米で5番目に大きな港を持っているため、その近くでシェールガスを液化し、そのまま港を通じて運び出すことができます。


さらにその周辺には、安いガスを製造・販売したり、あるいは石油化学系の製造業なども増えてきていますし、そこに投資する動きも活発になっています。結果、人口も雇用も増加傾向をたどっています。

経済成長率は新興国並みに上昇

アメリカには、「Tier1都市」とか「Tier2都市」といった呼び名があります。Tier1都市は、サンフランシスコやロサンゼルス、ボストン、ニューヨークなどのように、誰もが知っていて、かつ国際空港が置かれている都市のことを指しています。Tier2都市は、人口で200万人くらいまでの都市で、ここにオースティンが入ります。不動産では、オースティンの人気が沸騰していて、そこから溢れたお金の一部がコーパス・クリスティに流れています。


アメリカ政府が発表した、2012年度の都市圏別の経済成長率を見ると、全米381都市圏の中で、コーパス・クリスティは6.9%の成長率で第12位となりました。


また、第13位はオースティンで6.5%の成長率を誇っています。またテキサス州に関して言えば、やはりシェールガス、シェールオイルの恩恵が非常に大きく、オースティンやコーパス・クリスティ以外にも、ミッドランド、オデッサ、ビクトリアといった都市が、経済的にも大きく成長しています。

 

これらの都市は、そもそも何もなかった田舎町だったのが、シェールガスやシェールオイルの影響でにわかに人が集まり、経済成長を続けている状況です。

 

 

[図表2]アメリカの都市圏別経済成長率トップ20(2012年)

The United States Conference of Mayors,U .S. Metro economies をもとに作成
The United States Conference of Mayors,U .S. Metro economies をもとに作成


また、こうしたエネルギー関連産業だけでなく、シェールガス、シェールオイルによってエネルギーコストが格段に安くなったことを受け、さまざまな製造業が、テキサス州に進出しています。


それが、前述したようなコーパス・クリスティの6.9%という高い経済成長率へとつながっています。ちなみにこの経済成長率は、新興国と比べてみてもカンボジアやバングラデシュ並みと言ってもいいでしょう。先進国なのに、少なくともこの地域に関して言えば、新興国並みの経済成長率を実現しているのです。


一方で、リスクがあるのも事実です。例えば、シェールガス、シェールオイルを採掘する際には、環境面でネガティブな影響が生じてくるので、今後この点が社会問題になると、シェールブームが一気に縮小へと向かっていく恐れがあります。

 

また、シェールガスやシェールオイルというのは、もともとコストが割高なので、現在よりも安く原油を中東諸国から継続的に輸入できたら、シェールガスやシェールオイルの競争力がなくなってしまう可能性もあります。仮にそうなった時、テキサス州を中心とする不動産ブームが一服するケースも想定されるので、この点には注意して投資したほうがいいでしょう。

本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『究極の海外不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、出版社、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

究極の海外不動産投資

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