サブプライム危機により押し上げられた賃貸需要
今、アメリカには大体1億3000万戸の住宅用不動産があります。
その中にも一軒家やアパート、コンドミニアムなど、さまざまな住宅形態があるわけですが、注目されるのは2010年から2015年にかけて820万室の賃貸需要が生まれるということです。
これには、大きく2つのトレンドが背景にあります。
第1に、2007年のサブプライム危機によって、当時一軒家に住んでいた人たちの中には、住宅ローンの返済ができなくなった人が増えました。彼らは一軒家を売り払い、アパートをはじめとする集合住宅などの賃貸住宅に移り住み、賃貸需要を押し上げました。
第2に、アメリカの景気がようやく上向きになったこと。景気が悪化した時、職を失って実家に戻り、親と同居していた人たちが今、景気の好転に伴って、親元を離れて住み始めたことです。
こうした2つのトレンドがあり、5年間で約820万世帯の賃貸需要を増やすという流れができ上がってきたわけです。
実際、アメリカの不動産市況はほぼ底入れしたようです。
例えばテキサスなどはダメージが少なかったため、不動産価格は2011年頃から上昇に転じました。不動産がダブつき気味だったネバタ州のラスベガスでも、ようやく2013年くらいに底を打ち、上昇に転じています。
ベビーブーマーやその子ども世代の賃貸需要も変化
2012年のデータによれば、全米の平均で見ると、不動産物件の中心価格帯は世帯年収の3.2倍程度になっています。オーストラリアやカナダは、5倍、6倍になっていますし、香港に至っては13倍というとんでもない状況です。日本国内でも、東京カンテイが出している不動産データによると、新築不動産の価格は、東京であれば世帯年収の5倍、6倍です。
[図表]アメリカにおける州の経済規模トップ20(2012年)
それらを比較すると、アメリカの不動産価格は世帯年収から見て、まだ割安と言えます。年収が600万円であれば、物件価格は1800万円程度です。これが東京であれば、平均で世帯年収の5倍ですから、物件価格は3000万円くらいになります。
また、ライフスタイルから見て、アメリカの不動産価格が今後、堅調に推移するエリアを絞り込むこともできます。
例えば、7600万人いると言われているベビーブーマー世代が退職し、子どもも巣立って、郊外の一軒家から、街中の小さな家に引っ越して、夫婦2人でのんびり暮らそうという流れがあります。
あるいは、「ジェネレーションY層」と言われている、8000万人近くに達するベビーブーマーの子ども世代も、賃貸需要を後押ししています。彼らは、大都市圏に住み、車のない生活や、身軽な賃貸生活を好む傾向があります。
こうした人たちのニーズによって、ロケーションがよいなどの好条件の賃貸物件を保有していれば、家賃の値上がりや空室率の低下が見込まれ、それらを手入れすることで、さらに物件の価値を引き上げることができます。
日本にいると、1990年代以降、バブルの崩壊によって不動産価格は下落の一途をたどったというのが一般的な印象ですが、アメリカの場合は、上下を繰り返しながら、平均すると年3〜4%程度の値上がりを実現してきているのです。
このように、現在のアメリカ不動産市場には、さまざまな魅力があります。