「コストの安さ」でシンガポールに対抗
長期投資家を惹きつけるための秘策は、既に用意されている。それは、まだ無名ではあるが、スリランカ投資庁(BOI)によって設けられた「商業ハブ(Commercial Hub)」(旧Regional Operating Headquarters / ROHQ)というカテゴリーである。
BOIによるこの制度によって外国人投資家は為替管理制度の規制から免除され、外貨バンキング・ユニット口座を通じた国外への資本や利益の送金が自由に行えるようになっている。また、税金面での優遇や、会社設立が低コストで済むことなども、長期投資家がスリランカで投資するインセンティブとなる。
この商業ハブ/ROHQ制度を更にブラッシュアップすれば、外国人投資家はスリランカにの投資会社を設立することが可能となる。そして外貨建てで資本をスリランカに一時保管することで、約4%といった高い米ドル金利を享受しながら、配当金・利息・ロイヤリティーに対する有利な税制の恩恵をも享受し、更にアジア地域で結ばれている租税条約のメリットも受けられるのだ。これらは、シンガポールでの投資活動に必要な年間20万ドルという額に負担を感じる中堅投資家にとっては魅力的だろう。
この制度がより洗練され、いかに投資家にとって価値がある仕組みかを売り込めれば、プライベートエクイティ・不動産そしてその他の資産運用する投資家にとってスリランカは、シンガポールやドバイやモーリシャスよりもお金がかからない投資先として注目されるかもしれない。
南アジア各指標の「米ドル建てETF商品」の導入も
次に、コロンボ証券取引所は、既に制度として整っているユニット・トラストを通じて、地域のドル建てETF商品を導入することができる。コロンボ証券取引所にドル建てのETFを上場するとともに、外国人投資家には資本の本国送還の自由が与えられる。そうすることで、外国人投資家はルピーとの通貨交換性を気にする必要もなければ、ルピー建ての証券を取引するための証券投資口座も必要にならなくなる。
その結果、外国の個人投資家は南アジアのファンドに直接アクセスすることが可能になり、コロンボ証券取引所を通じて、インド国立証券取引所指数・ボンベイ証券取引所総合指数・パキスタンのKSE100指数そしてダッカ証券取引所総合指数へ投資することが出来るようになる。またコロンボ証券取引所は、債券やその他証券に対してもドル建てでの上場を呼びかけ、シンガポールよりも有利なコストを提示することも出来る。
次回は、この好機に潜む課題、そしてメリット・デメリットをご説明します。