アジアの経済ハブとして地位を確立したシンガポール。しかし、コスト面などで敷居の高い投資先になったのも事実。地政学的なアドバンテージに加え、低コスト等を武器にして海外投資家を取り込もうとするスリランカの狙いをご紹介します。

規制や価格面で敷居が高いシンガポールでの投資

シンガポールは資本を惹きつけるために、税率を引き下げたわけでもコンプライアンス基準を緩和したわけでもない。しかし以前にも増して、世界中の投資家の信頼を勝ち取ることに成功している。

 

シンガポールでは競争を意識した税制を採用しており、債権者の法的権利と投資家保護に関しても、西欧の基準を適応している。更にシンガポールでは議会制民主主義によって政治体制が安定しており、確立された裁判制度や健全なコーポレート・ガバナンス体制も用意され、厳格な規制も多く整備されている。また有能な外国人労働者に対し、門戸を開放する移民政策を打ち出しているため、質の高い労働力を確保しやすい環境になっている。

 

その結果、シンガポールはAAA格付けという素晴らしい評価を収めて、世界中から資本が流れ込むようになったが、そのことで南アジアの人々にとっては高額な投資先となってしまった。出資約束金額があまりにも高く、コンプライアンス体制は中堅投資家にとっては不親切なものになっている。その上、シンガポールの米ドル建て預金金利は年利0.5%を下回っている。

国際化に向けて改革が進むコロンボ証券取引所

インド・パキスタン・バングラデシュ間の信頼関係の欠如により、南アジアは政治面で分裂したままだ。インド・パキスタンおよびその周辺国と強い信頼関係を築き、政治的中立を保っている国家はスリランカしかない。またスリランカの銀行産業は150年の歴史を誇る立派なものである。2007年に整備された会社法により、スリランカ企業の信頼は上がった。その結果、スリランカはインドとその他南アジア諸国と租税協定を結ぶに至った。

 

インドとは異なり、コロンボ証券取引所は外国の個人投資家をいつでも迎え入れられるよう準備が整っている。現在、取引相手の保護強化(Counter Party Protection / CPPの導入)、上場投資信託(ETF’s及びREITs)、さらにドル建てでの上場を可能にするなどの改革が進行中だ。ひとたび、これらが実行に移されれば、コロンボ証券取引所の地位は世界的に上昇するに違いない。さらに刷新された証券取引委員会は、株式市場における厳格な秩序を維持することを公約している。

イスラム法適格ファンドなど多様なサービスを提供

スリランカには勅許管理会計士(CIMA)や公認会計士の資格を持つ人材、そして国際的に経験豊富な証券アナリストや投資銀行家などのスペシャリストが大勢いる。そして金融セクターを発展させるために不可欠な金融関連のスキルベースの提供に役立っている。スリランカのリーガル・サービスもまた国際水準に到達している。

 

植民地独立後も英語の使用を継続した行政、スリランカが抱える多様な人種、イスラム法適格ファンドの提供、そしてタミル語圏である点が、南アジアの独特なニーズに幅広く対応できているのだ。それに加えてサービスの価格帯の低さが、シンガポールとドバイと比べたときに、立地環境と併せて大きなアドバンテージとなる。


次回は、シンガポールからの流出が見込まれている南アジアの投資家をはじめとした、国外からの投資を呼び込む施策をご紹介します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」に掲載した記事「Big Idea – Openness – Sri Lanka as the next regional Investment Centre… is it time to take off? 」を、翻訳・編集したものです。

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