インドやシンガポールが規制を強化する今、スリランカにはその状況を利用して国外投資家を獲得するチャンスが訪れています。今回は、過去に日本の規制強化をきっかけに成長し、スリランカがお手本とすべき地位に上り詰めたシンガポールの事例を中心にご紹介します。

他国の規制を自国のチャンスにする

海外からインドやシンガポールに投資するのはハードルやコストが高いため、スリランカにはチャンスが生まれている。他国の規制を利用することで、投資家を自国に惹きつけようとする動きは、これまでもあったことである。

 

たとえば香港は、中国国内の規制をきっかけとして利用した。またアメリカ国内でのユーロ債(※)の取引が規制されたため、ロンドン市場でユーロドル債の取引が増加し、1968年にはユーロ債取引のおそらく60%がロンドンで行われた。同様に日本政府も1992年に日経225先物取引(旧大阪取引所)に対し厳しい規制をかけたため、アメリカのトレーダーがシンガポール国際金融取引所(SIMEX)へと流れていった。

 

このような恩恵を受ける地域は近隣諸国に留まらないだろう。テロ組織に資金が流出しないよう監視する欧米の税制は、煩わしい顧客確認を強化するようになった。また租税情報交換協定(TIEAs)は世界中で採用され始め、以前からタックス・ヘイブンに潜んでいた資金が明るみに出てきた。この結果、国際資本はより流動的になり、その再分配へ機が熟している。もしスリランカの信用を高めることが出来たならば、このような資金がスリランカに転がり込むチャンスが訪れるに違いない。

シンガポールの運用資産の8割以上は海外由来

海運・観光・金融という産業は、シンガポール・香港・ドバイのようなハブ国家には効果的だった。スリランカはインド貨物輸送産業のマーケットシェアのうち20%以上を占める。また地域ツーリズムの拠点としても動き始めている。昨今、インドとの関係強化によって、スリランカの海運・観光・金融産業を完成させる段階に入ってきている。その可能性がどれほどの規模になるか一考してみてほしい。

 

シンガポールには2014年にこのような機会が到来し、見事な結果を生み出している。同年のシンガポールの運用資金は30%増え、1兆7000億ドル相当となった。シンガポール金融管理局(MAS)は「アジアの経済成長で増加した資産流入、そしてアジア全域の投資ハブとして確立されたシンガポールの安定的な地位のおかげで、勢いある成長が見られた」と言う。シンガポールの運用資産のうち81%は海外からやってきて、68%以上がアジア太平洋地域に投資された。

 

シンガポールの運用資金はここ4年で倍増し、その額は国の経済規模を示すGDPの5倍以上にもなる。シンガポールの市場は十分な取引量があり流動性も高く、銀行・保険・投資銀行・トレジャリーサービスなどの業務も盛んで、世界で5本の指に入る活発な外国為替取引市場だ。

 

次回は、大成功を収めたシンガポールに及んだ悪影響、そして、その変化をスリランカがどう利用できるかをご紹介する。

 

※ユーロ債
発行体の自国市場以外の市場で発行される債券のこと。自国での発行に比べて規制が緩いことや税金面でのメリットがあって発行される。ここで言うユーロは、通貨の「ユーロ」とは無関係。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」に掲載した記事「Big Idea – Openness – Sri Lanka as the next regional Investment Centre… is it time to take off? 」を、翻訳・編集したものです。

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