今回は、銀行担当者の「財務の知識」を見極める方法を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「少人数私募債」による現金増が抜けていた!?

ある会社で、社長に退職金を出すことになりました。
一連の流れは次のとおりです。
①銀行から退職金の原資の一部を借りる。
②退職金を現社長に支給する。
③会社が少人数私募債を発行する。
④退職した元社長は私募債を引き受け、会社へ資金を貸す。
⑤元社長からの資金をもとに、会社は銀行へ、借りた原資の一部を返す。

 

その会社の後継者は、銀行から資金調達するべく、
一連の流れを、融資を受けている銀行員に説明しました。
後日、その銀行員は、一連の流れをもとに、
損益計算書を作成してやってきました。
“先日のお言葉どおりだと、すぐに返すと資金ショートになりますよ!”
“そうならないように、つなぎ資金を融資しますよ!”
と、言ってきたのです。

 

後継者は「おかしいな」と思い、その資料を見ました。
するとその資料には、
少人数私募債による現金増が、抜けていたのです。
そもそも損益計算書ですから、
少人数私募債による現金増が、反映されないのは当然です。
少人数私募債は、
B/S(貸借対照表)にしか、反映されないのですから。

財務に明るくない銀行員に要望を伝えても…

“ここには、少人数私募債のことが、入っていないですよね。”
と、後継者は銀行員に言いました。
“えっ!?”
その銀行員は、目が点になったそうです。
で結局、少人数私募債のことを、もう一度説明したのです。
“いやぁ、それは、抜けていました。失礼しました。”
と、その銀行員は言ったそうです。が、
要は、少人数私募債のことを知らなかった、のです。
と同時に、P/L(損益計算書)で考える発想しか、なかったのです。

 

少人数私募債を発行しているのは、まだまだ、一部の企業です。
なので、
その銀行員が少人数私募債のことを知らなかった、
というのも、無理はないのです。
おそらく、その銀行員は、よくわからないまま、
資金融資の部分だけで、損益計算書を作成したのだと思われます。

 

銀行員に、少人数私募債を使う流れを説明する場合には、
“少人数私募債のこと、ご存知ですか?”
と、たずねてみてください。
それだけでも、その銀行員が財務に明るいかどうか、
判断できるのです。
もしも財務に明るくない感じなら、その人物には、
交渉事におけるこちらの要望などが理解されにくい、
と思っておくべきです。
少なくとも、要望などは支店長クラスに伝えるべきです。
そうしないと、財務に明るくない銀行員に要望を伝えても、
誤った理解をされたり、ほったらかしにされたりするだけで、
前へ進まない危険があるのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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