納税資金を意識的にプールする「納税緊急口座」の使い方

売上収入口座残高の50％相当額を口座にシフト

赤色である「納税緊急口座」は、会社の納税と、いざというときのお金をストックするための口座です。

会社は決算にともない、最終的な利益を確定した後、約40％程度の法人税・地方税が課税されます。また、消費税の課税事業者の場合には、消費税も納税しなくてはなりません。

納税は基本的に、決算後2カ月以内（たとえば3月決算であれば5月末までに）に行ないますが、会社によっては決算では利益が出ていても、いざ納税の段階に至ると、納税資金が手元に残っていないということがあります。

その理由として、利益はあっても手元にお金が残っていない「勘定合って銭足らず」であったり、納付期限までに急激に資金繰りが悪化したり、あるいは突発的な支払いが生じて資金を使ってしまったなどの理由が考えられます。

そこで、決算時にまとまった納税資金を捻出するのではなく、あらかじめ月ごとに納税資金を積み立てることを仕組み化して、納税資金を意識的にプールするのです。

具体的には、運転資金口座振替後の売上収入口座残高（現金利益）に対して、50％相当額を毎月「納税緊急口座」に資金シフトします。

現状においてすぐに納税が発生することはなくても、この預金口座の残高を追うことによって、その時点における納税資金がリアルタイムで「見える」のです（実際の納税についての取り扱いは後述します）。

突発的なお金の支出に備えた口座としても活用

会社を運営していると、取引先の倒産や現場での事故、使用設備の故障や商品毀損によるクレーム対応など、思わぬ出費が生じる場合があります。

そこで、納税緊急口座を納税資金に備えた預金口座として使うだけではなく、突発的なお金の支出に備えた口座としても同時に機能させます。

それゆえ、この口座のイメージカラーは赤色なのです。

つまり、納税緊急口座の機能を「納税資金の貯蓄＋緊急資金の貯蓄」とするのです。

なお、運転資金口座にあるお金だけでは、運転資金の支払いが困難という危急時においても、その足りない分をこの口座から運転資金口座へと振り替え、早急に手当てするようにしてください。

［図表］納税緊急口座は突発的な支出にも対応する

資金シフトは一定のルールで運用を

納税が発生しない会社の場合はどうするか？　ここで疑問を感じる方もいるかと思います。

たとえば、過去の赤字が累積している会社は、当期に利益が出ていたとしても、それが過去の赤字によって相殺され、税金を払わなくてよい場合があります。

このような場合は、50％の資金シフトをすることが不必要に感じられるかもしれません。それに、近い将来、設備投資や臨時の支出を予定していたり、借入金の返済があったりなど、現実的に納税緊急口座に50％の資金シフトをすることが、困難である場合も考えられるでしょう。

そんなときは、あえて50％という割合に固執せず、会社の状況に見合った割合で設定してください（逆に何の予定もない場合には、原則どおり50％で振り替えてください）。

むしろ大切なことは、一度割合を設定したならば、よほどのことがないかぎり、それを変更せず、1年間はその割合を継続することです。

なぜなら、後日その割合について検証や比較をする場合、その割合が毎月一定でないと検証自体が意味をなさず、かつ定型的なお金の流れが確保できないからです。

振り替えるお金がないという緊急時はさておき、基本的に資金シフトは一定のルールにしたがって行なってください。

※人件費を支払っている場合、その人件費について源泉所得税や住民税、そして社会保険料の納税が発生します。これらは人件費にヒモづいた運転資金の一つとみなして、納税緊急口座ではなく運転資金口座から納税することをお勧めします。