最低滞在日数は緩和されるも自治体の対応は様々
前回の続きです。
②特区民泊に関して改善を促したい点は、やはり何といっても宿泊日数要件です。前述のように、2016年10月に最低滞在日数は6泊7日以上から2泊3日以上へと改められましたが、自治体によって対応は様々です。
大阪府と大阪市は条例を改正し2017年1月より2泊3日以上に緩和する予定ですが、大田区は今のところ6泊7日以上となっています。6泊7日の宿泊日数では、民泊を継続的なビジネスとして展開していくことは困難でしょう。
旅行客、とりわけ海外から初めて日本を訪れる観光客の気持ちになれば、さほど長くはないスケジュールの中で、東京に6泊するよりは、東京に2泊、大阪に2泊、沖縄に2泊などというように、あちらこちらに移動して観光を楽しむことを選ぶはずです。となると、特区民泊のうち1週間近くも1つの場所に滞在することを強いられるものについては、宿泊先の選択肢から真っ先に外されるに決まっています。
部屋面積にも規制…民泊運営を諦める人が続出
また、部屋面積について25平方メートル以上の制限があることも大きな問題です。簡易宿所では1人3.3平方メートルに緩和されていることとつじつまが合いませんし、今のままでは25平方メートル未満の空き家・空き室が特区民泊では利用できないことになり、民泊による空き家活用という政策目的が大きく阻害されることになりかねません。
実際、こうした日数制限と面積制限の存在は、特区民泊に参入を断念する大きな理由となっています。大田区で特区民泊を開始するに当たり、当社が取り扱った初期候補(民泊を始めたいと考えていた個人・法人)は1000室以上ありましたが、6連泊要件と25平方メートルの面積制限があるために10分の9に当たる約900室が脱落してしまいました。さらに、他の理由で脱落する候補者も相次ぎ、最終的に特区民泊の申請を行ったのは30室弱にすぎませんでした。
[図表]特区民泊への参入を断念した理由
ちなみに、内閣府によると特区の民泊施設は11月時点で32施設(93部屋)、利用者は348人(うち外国人187人)にとどまっています。厳しい規制が特区民泊の活用を大きく妨げていることは明らかでしょう。