規制緩和が行われた「簡易宿所」の最新事情
前回の続きです。
①簡易宿所、②特区民泊、③イベント民泊、④農家民宿のうち、①簡易宿所を見ていきましょう。
簡易宿所については、2016年4月に旅館業法施行令の改正が行われ、従来に比べ営業許可を取りやすくなりました。今現在、簡易宿所の形で民泊を行うためには、以下のような条件を満たすことが必要になります。
第一に、1客室の床面積の合計は33平方メートル以上でなければなりません。ただし、宿泊者の数が10人未満の場合には1人当たり3.3平方メートル以上で構いません(この面積要件の緩和は先に触れた旅館業法施行令の改正によって導入されました)。また、1部屋33平方メートル以上の場合には、1人当たり1.5平方メートルを超える有効面積を確保することが求められています。
第二に、換気、採光、照明、防湿、排水、ガスの設備等を所定の基準に従って整備することが必要です。たとえば、東京・大田区の場合には、採光、照明、ガス設備について以下のように定められています。
●採光 採光窓(有効面積の10分の1以上)
●照明 40ルクス以上の設備(客室・応接室・食堂)
●設備を設ける場合 専用の元栓を設置、耐食性・耐圧性で、容易に接合部分が外れない材質
第三に、共同トイレ、共同洗面所に関する基準を満たさなければなりません。具体的には、トイレを付設していない客室がある階には、男子用と女子用を区分した共同トイレを設け、トイレを付設していない客室の宿泊定員に応じた数の便器を設置することとされています。ちなみに、30人以下の場合は、以下のような形になります。
【宿泊定員に応じた便器の数】
5人以下 2
6人以上10人以下 3
11人以上15人以下 4
16人以上20人以下 5
21人以上25人以下 6
26人以上30人以下 7
一方、共同洗面所に関しては、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を備えることが求められています。また、洗面設備を付設していない客室のある施設については、洗面設備を付設していない客室の合計定員に応じた数の給水栓を共同洗面所に設けることが必要です。
第四に、多くの地域では玄関帳場(フロント)の設置も必要になります。実は、先に触れた2016年4月の旅館業法施行令の改正に際して、フロントを設置しなくても簡易宿所の営業許可を得られるよう規制緩和が行われたのですが、2016年5月の時点で47都道府県、20政令市、東京23区の約4割に当たる35自治体が従来と変わらず条例でフロント設置を義務付けています(2016年2月9日付朝日新聞の記事より)。
第五に、用途地域が、第1種住居地域(ただし床面積が3000平方メートル以下)、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域であることが条件となります。また、おおむね100メートル以内に学校等がある場合には、簡易宿所の設置によって清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、保健所から学校等を所管・監督する関係機関に意見の照会が行われます。
第六に、消防法に基づく手続きも必要になります。具体的には消火器や誘導灯、自動火災報知設備を設置することが求められます。また、カーテン、じゅうたん等は防炎物品とすることが必要になります。
「確認申請」「営業許可申請」などの書類準備も必要
これらの他、既存の建物を利用して簡易宿所の許可を取得する場合には、簡易宿所に使用する床面積の合計が100平方メートルを超える場合で用途が住宅などの場合には、簡易宿所への用途変更の確認申請も必要になります。
なお、簡易宿所の営業許可の申請に際しては、通常、以下のような書類の提出が必要に
なります。
【東京都大田区の例】
•旅館業営業許可申請書
•構造設備の概要
•申告書
•営業施設を中心とする半径300メートル以内の見取り図
•建物の配置図、正面図及び側面図
•営業施設の各階平面図
•電気設備図
•客室にガス設備を設ける場合にあっては、その配管図
•換気設備図または空気調和設備図
•給排水設備図
•法人の場合は、定款または寄付行為の写し及び登記事項証明書(6カ月以内のもの)