自分の身体を歯止めにして台車の暴走を防止…
●CASE6 作業員は、台車が動く方向に自分の身体を置いて暴走を防止
(食品メーカー・F社・工場)
地盤沈下が激しい土地に建つ工場で、沈下は最大で110ミリ。床の傾きはぱっと見てもわかるほどでした。
実際、材料や製品であるパンを載せて移動するための台車は、放っておくと勝手に走り出してしまいます。そのため、——これは「現場の知恵」と言えないこともありませんが、作業中は自分の身体を台車よりも坂下側に置いて、身体で台車を止めながら荷物の移動を行っていたのだそうです。
また、パンの材料をこねる機械なども、そのままでは傾いてしまいますから、機械の下に“ゲタ”(スペーサー)を履かせて調整していました。もっともそれが不充分だったのか、それとも調整してからさらに沈んでしまったのか、それでも脚が浮いてしまっている部分もあります。
設備担当会社の方も視察に来ていたのですが、その様子を見て「これは怖い」と言っていました。もともとこね機などは振動の激しい機械なので、設置場所が不安定だと事故発生の危険性も高く、これはさすがに見過ごせない状態だとか。
「安全」は、あって当たり前のもの
工場設備のリニューアルとともに、沈下修正工事をすることになりました。主に学校給食のパンを生産し卸しているため、学校の長期休暇中なら工事のための時間が捻出できます。そこで機械も止めて一気に修正施工を行いました。
床が水平を取り戻したことで、「安全」という、あって当たり前のものに気を取られることなく、作業員の方が製造工程に集中できるようになったというお話です。