退職金を準備するなら、まずは引退時期を明確に
前回の続きです。オーナー経営者の生命保険の活用方法として、四つ目の、経営者の退職金として利用することについて解説します。中小企業のオーナー経営者は、自分の退職金は自ら用意する必要があります。退職金の準備にも、生命保険が活用できるのです。
会社の資産に余裕があれば、退職金を現預金から支払ったり、金融資産を売却して支払うこともできます。しかし、そのような体力がない場合には、限られた会社の利益を有効活用して、徐々に退職金を準備しておく必要があります。その手段として生命保険が有効なのです。
生命保険を利用して退職金を準備する場合には、まずいつ引退するのか、その時期を明確にしなければなりません。もし、10年、15年先に引退することが明らかであれば、逓増定期保険に加入しておくのが効果的です。加入年齢によって保険料の全額から4分の1を経費算入できます。
重要なのは契約した保険の「出口」の見極め
逓増定期保険への加入は、オーナー経営者の引退の決断をはっきりさせる効果もあります。これまで成長を支えてきた会社の経営から退く決断はなかなかできません。しかも、オーナー経営者であれば、誰かに引退を迫られることもないので、自らの意志で引退時期を明確にしなければなりません。引退が遅れれば、次世代の経営者の育成に悪影響を与えることもあります。
逓増定期保険は有利に解約できる時期がピンポイントで決まるため、あえて加入して、解約するまでの間に事業承継を完結させるという決断をするのもよいのではないでしょうか。引退の時期がまだ先の若いオーナー経営者の場合は、長期定期保険を利用するのが有効です。退職の時期を自由に設定することができます。
養老保険の満期保険金を退職金に利用することもできます。もし、満期の時期に退職をしない場合でも、満期保険金を年金形式で受け取ることで高額な課税を回避することができます。満期保険金を一度に受け取ってしまえば、その金額を一度に会社の利益として計上しなければなりません。しかし、分割で受け取ることで、利益の計上も複数年に分散することができます。
この方法を利用すれば、仮に退職の時期がずれても大きな損失はないので、「とりあえず退職金の貯蓄のために」という感覚で加入することも可能です。ただし、年金受け取りができるかどうかは保険会社によっても異なるので確認が必要です。
このように生命保険には、オーナー経営者をバックアップする活用法が数多くありますが、繰り返し述べてきたように、加入する際には目的をはっきりさせることが重要です。それは、出口をしっかり見極めることです。支払った保険料が経費として節税できても、満期保険金や解約返戻金を受け取ったときに税金がかかってしまっては意味がありません。上手に受け取ってこそ、保険加入の効果が発揮されることを忘れてはならないのです。