前回は、法人契約の保険のメリットの一つとして「利益の繰り延べ」について解説しました。今回は、減価償却費を有効活用して会社の利益を圧縮する方法について見ていきます。

減価償却後の簿価と時価の差を利用する

減価償却費を上手に使うことは節税の王道ともいえます。たとえば、会社で購入する車両も上手に活用すれば賢い節税が可能です。

 

車両の減価償却費を計算するときの耐用年数は6年です。ですから、価格が2000万円のベンツも購入後6年経過すれば、簿価が1円になります。減価償却の方法には毎年定額を減価償却費として計上していく定額法と毎年一定率を計上していく定率法がありますが、車両代を定率法で減価償却する場合には、6年の耐用年数のうち、前半の3年で約80%が減価償却されます。

 

一方で車両の時価は、それほど落ちません。この差がポイントです。新車を購入して数年が経過し、簿価が低下した段階で売却すると、売却益が見込まれる場合があります。減価償却のカーブと実際の時価の低下するカーブに差があるからです。

 

 

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耐用年数の短い「中古」の資産を有効活用

さらに有効なのが中古車です。中古車を購入すると、減価償却の際の耐用年数が短くなります。たとえば、4年落ちの中古車なら耐用年数が2年です。定率法で計算した場合、耐用年数が2年なら1年目の償却率が100%になります。つまり期首に購入すれば、1年目に全額を経費にすることが可能になるわけです。

 

4年落ちの中古車が最も有利といわれますが、このような仕組みになっているのです。人気車種の高級車であれば時価はそれほど落ちませんから、事業が赤字のときに売却すれば、そこそこの資金に転用できます。ちなみに美術品の減価償却費も有利になっています。これまでは1点20万円(絵画は号あたり2万円)未満の美術品が減価償却資産として取り扱いされていました。

 

この度、法令解釈通達の改正が公表されて、15年1月1日から「100万円未満の美術品を減価償却資産として扱う」という新しい基準になりました。情勢の変化により、金額が引き上げられたわけです。また、中小企業なら少額減価償却の特例が適用されます。30万円未満の減価償却資産であれば取得価額に相当する金額を損金の額に算入することが可能です。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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