前回は、減価償却の活用について解説しました。今回は、航空機などを購入して航空会社等にリースする「オペレーティングリース」の仕組みについて見ていきます。

なぜオペレーティングリースで利益を圧縮できるのか?

オペレーティングリースという言葉を聞いたことがあるでしょうか。節税ができるというイメージは何となく持っていても、詳しい仕組みはわからないという人が多いでしょうから、その仕組みについて紹介しましょう。

 

オペレーティングリースでは、航空機などを購入して航空会社等にリースします。航空会社等からはリース収入を得ますが、受け取るリース代金よりも減価償却費のほうが多くなるため、その分が赤字となって利益を圧縮できるというものです。その後、航空機を売却すれば、それまでに受け取ったリース料と売却代金で購入費は賄えるので、節税効果だけが残るという仕組みです。

航空機の売却額によっては損失が発生する可能性もある

オペレーティングリースを行うためにはまず、匿名組合を設立します。会社は匿名組合に出資します。匿名組合は出資金と必要があれば銀行からの借入金を加え、航空機を購入します。この航空機は、航空会社等にリースが行われます。そして、匿名組合は航空会社等からリース料を受け取り、それが収益となります。

 

購入した航空機は匿名組合が購入したものですから、匿名組合で資産計上します。代わりに匿名組合は、航空機の減価償却を行うことができます。減価償却費はリース料よりも高額になりますので、匿名組合は赤字になります。

 

この赤字が出資者にも影響を及ぼすのです。そもそも匿名組合への出資した資金は、金融商品を購入した場合と同じ取り扱いとなります。出資した段階で、会社の財務諸表に資産の部で出資金などの名目で計上されます。

 

これにより、匿名組合に大きな損失が発生すると、この損失は出資割合に応じて出資者側にも反映されます。結果的に匿名組合の損失が会社の損失となり、利益を圧縮する効果があるのです。

 

出資した金額は3年程度で全額経費にすることができます。初年度には、6割近い金額を経費にできるのが一般的です。リース期間終了時には航空機は売却されて、その金額は出資者に分配されます。リース料の分配と売却額の分配で出資金は回収していけます。ただし航空機の売却額によっては損失が発生する可能性があります。

 

また、ドル建てで設計されることが多いため、ドルベースでは損失が出なくても為替の状況次第では為替差損が出る可能性もあります。ちなみにオペレーティングリースは個人で行ってもメリットがありますが、個人の場合は組合を通さずに直接購入するスキームになります。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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