企業姿勢がわかる「平日夕方」の抜き打ち現場訪問
前回の続きです。
現場見学会をさらに有効に活用する裏技があります。見学会会場の現場は、きちんとしていて当たり前です。建築途中の現場を見学会会場にした場合はなおさら、見学会当日はきれいに掃除され、今後施工する材料はすべて片付け、見せられる部分だけが用意されています。作業途中や、あまり見せたくない舞台裏は、見えないように養生してあるはずです。
ですから、その住宅会社の本当の現場を見学するとすれば、見学会後の現場、しかも平日の夕方、職人が現場の片付け作業をする日没時にあえて抜き打ちで足を運びます。
現場がすっきりと整頓され、管理されている状態であるかどうかは、一目見ればわかるものです。道具や材料が雑然とし、たばこの吸い殻などが現場にそのままになっている場合、たとえ建築途中の現場であっても、気持ちのいいものではありません。その場は施主のものであるという気持ちが現場に欠けているのかもしれません。それは、そこで働く大工などが信頼出来るかどうかをいちばん簡単に見抜く方法なのです。現場をお客様から預かっているという気持ちで丁寧に作業をしているかどうかです。
企業姿勢と現場は一見あまり関係ないように感じますが、会社自体がお客様とどう向き合っているか、また住宅会社と下請けとの関係が険悪ではないか……そうしたことも、現場の佇まいに如実に表れるものなのです。
「施主同士が接触すること」を避けたがる住宅業界
また、日時を決めて開催する見学会の〝現場〞には、施主であるお客様はいません。お客様がどんな暮らしをしたくてその家を建てたのか、どんな想いを住宅会社に託したのかを直接聞くことが出来れば、真の意味で完成現場見学会と呼べるのですが、残念ながら施主同士を会わせることに住宅業界は積極的ではありません。
なぜなら、すでに「家」を建てたお客様は、住宅会社にとって不利益な情報を数多く持っているからです。そのため、なるべくお客様同士を引き合わせることのないように、現場見学会用に整備された〝現場〞を公開しているわけです。
もちろん、特に構造見学会の場に、その施主を呼び、見学者の相手をさせるということはそうそう出来るものではないでしょう。そこでぜひ必要になるのが、見学会とは別に、既存のお客様を紹介してもらって、話を聞くということです。そうした願いが全く叶えられないとしたら、その住宅会社は情報交換されたくないことがあるのかもしれません。
実際に家を建てた人の話をたくさん聞くというのは、本当に大切なことです。たとえ営業マンが「自分の言葉を信じてほしい」と繰り返しても、本当にその言葉を確認するには、そこで建てた人たちがどう思っているかを知るしかないのです。
モデルハウスを見ても、どんな資料を見ても、本当のところはわかりません。1軒、2軒ではなくてもっとたくさんの人に会うべきです。住宅会社側は、満足している人にしか絶対会わせないでしょうから、そうした中からも本音を推し量るには、最低でも5人以上のOBの人に会って話を聞きたいものです。
私どもの場合は、口コミが生命線と言ったように、それこそ何人でも、OBの方をむしろ積極的に紹介します。詳しくは後述しますが、友の会という語りたくてうずうずしている人たちがたくさんいる会もあります。その会では、お花見やクリスマスパーティーといった会をよく催しています。そうした会にはランダムに200人以上のOBのお客様が参加しています。そこは情報の宝庫です。聞き放題です。ご希望があれば、そうした会にも招待します。そうした場では、こちらからの情報の制御などやりようもありません。もちろん、そんな気もありません。たまたま耳の痛い話を聞かされたとしても、それは私どもにとってもありがたい改善すべきテーマの提示であるわけです。