前回は、住宅会社選びで「口コミ」が生命線となる理由を説明しました。今回は、住宅建築を検討する際に受け取る見積りについて、留意すべき点を見ていきます。

契約の前日まで総費用がわからないケースも

住宅会社に相談した場合、契約前であっても要望に近い間取りプランと見積りが提案されます。見積り書や工事の範囲には、特に規定はありませんから、各住宅会社が独自の基準で見積り、算出します。

 

住宅の場合、一般的に言うと建築費用のうち建物本体の価格を表しているのが「建物本体価格(または建物本体基本価格)」です。当然ですが、この価格だけでは「家」は建ちません。この価格のほかに、数多くの支出項目があり、変動要素を含んだ合計が最終的な総費用となるのです。しかし、契約前の段階で、見積りがどこまでの項目を含んだ価格かをお客様にきちんと説明するかどうかはその住宅会社や営業マンによってまちまちなのです。中には、契約の前日まで総費用がわからない、会社によっては言わないというケースがあるほどです。

 

さらに建物本体価格の範囲も、会社によってどの工事までがその範囲に入るかは実際ばらつきがあります。企業サイトやチラシなどでローコストの工事費用を前面に打ち出している会社がありますが、そのほとんどはこの建物本体価格のことです。財産としての「家」を守る地盤補強や、生活に必要な屋外給排水工事は省いたものであることが多く、その金額では実際には「家」は建たないのです。

 

そのため、「家」が実際に建つにはどのような支出項目があるのかを覚え、見積りが提示されたら、その金額は建物本体価格か、どこまでの項目を含んだ金額なのかを納得出来るまで確認することが必要です。あまりにも安く見える見積り金額の場合、地盤調査・補強工事、屋外給排水工事、外構工事、申請費用、建築設計費用、その他生活に欠かせない要素までオプション費用としてのちのち別途請求される場合がありますから要注意です。

基準のない曖昧な表記、「坪単価」を理解しておく

繰り返しますが、建築総費用とは、建物本体価格に設備オプションや外部附帯設備工事(別途工事費)、申請費用(諸経費)を総計したものであり、それが最終的な建築総費用となります。また、実際に生活を始めるまでには、このほかに登記費用や引っ越し、仮住まいの費用などがかかりますので、最終的に予算が足りなくならないよう、何度でも打ち合わせ、確認を繰り返すことがとにかく大切です。

 

建物本体価格は、坪単価にも大きく影響してきます。家づくりの予算基準として坪単価○○万円という目安はよく使われますが、坪単価だけで比較するのは大変危険な行為なのです。

 

実際、折込みチラシなどで、「坪単価○○万円!」を大々的に掲げたいわゆるローコスト系の住宅会社を見かけます。これは、一千万円単位の大きな金額を見せるより、身近な万円単位の坪単価を見せる方がよりお得感が出しやすいという戦略の一つです。そこに表記された坪単価は、建物本体価格を床面積で割ったものです。附帯工事や諸費用は一切含まれていませんし、含まれていたとしてもごく一部でしょう。実際、最終建築総費用を床面積で割れば、決してローコストとは言えないケースがたくさんあります。

 

安易に坪単価で比較しない。そもそも坪単価自体が基準のない曖昧な表記であるのを覚えておくこともポイントの一つです。

本連載は、2017年4月12日刊行の書籍『改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる

改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる

貞松 信人

幻冬舎メディアコンサルティング

人生を左右するほどの大きな買い物である「家づくり」。「家づくり」は購買経験を積むことが出来ないため、何が正しくて、何を基準にすれば良いかわからない、とても難しい買い物です。 あるアンケート調査では、注文住宅を…

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