前回は、地盤沈下が原因となって発生した「振動」が、人や物に与える影響について解説しました。今回は、床下の空隙による振動が深刻化した機械部品メーカーの事例を見ていきます。

精密さが求められる作業に支障が・・・

●CASE3 床下の空隙によって機械に振動が発生。不良品率が高まった

(機械部品メーカー・C社・工場)

 

振動が招く被害は、思わぬところに現れるものです。前回述べた機械設備への悪影響から、歯車を製造するメーカーで不良品率が高まった例をご紹介します。

 

歯車と一口に言っても、素材も大きさもさまざまなものがありますが、一般に機械に使われるサイズのものは鉄鋼製で、棒材を円盤状に切ってから削り出したり、鍛造でおおまかな形をつくってから歯を削り出すといったつくり方をします。

 

特に神経を使うのは歯の切削工作だそうで、信頼性・耐久性の高い歯車をつくるには、高精度に歯を仕上げなければいけません。しかし、そうした加工の歩留まりが悪化しているとのことでした。

 

同社では自ら工場内を検査。その過程で床に孔を開け、床下を調べてみたところ、そこに空隙が発生していることがわかったのです。その空隙のせいで、機械を作動させた時に通常以上に大きな振動が発生してしまい、そのために加工精度にばらつきが生じているというのが、調査の分析結果でした。

空隙を充填し、沈下した地盤を改良することで解決

普通、そこで考えられる対処は、建設会社を呼び、コンクリートを流し込んで空隙を埋めるという方法ですが、しかし、この工場の場合、もともとの地盤が弱く、コンクリートを流して新たに大重量がかかった際、さらに沈下が起こってしまう可能性がありました。

 

そこで、修正の仕方について私のところに相談に来られたのがきっかけで改めて調査をしてみると、すでに相当の沈下が起きていることがわかりました。空隙を充填し、沈下した地盤を改良したところ、機械の振動はなくなり歩留まり率は以前のレベルに戻ったとうかがっています。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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