前回は、工場床下の空隙による振動が深刻化した機械部品メーカーの事例を紹介しました。今回は、床下に空隙ができ、フォークリフトの走行で激しい震動が発生した倉庫業の事例を見ていきます。

地盤沈下によって、隠れたところに空隙が・・・

●CASE4 床下に空隙ができ、フォークリフトの走行で激しい震動が発生

(倉庫業・D社・倉庫)

 

一見、何ともないように見える床でも、地盤沈下によって"隠れた"ところに弊害が発生していることがあります。

 

以前、修正工事を手掛けたケースなのですが、その倉庫は茨城県の海岸近く、もと低湿地帯の埋め立て地にあります。それが、東日本大震災で地盤に液状化現象が発生。周辺一帯でも、民家の建物や塀が傾いたり、道路に亀裂が走ったりといった被害が出ました。その倉庫でも、建物周囲で地面が落ち込んでいるのが観察できました。

「高床式」の建物は、地盤沈下が起こる可能性が高い

さて、その倉庫は、いわゆる「高床式」の建物です。倉庫の床面を、基礎の上にあらかじめ盛土して1メートル程度高めてつくってあるのです。

 

この高さは荷物(生鮮野菜)を搬入・搬出するトラックの荷台に合わせたもので、倉庫の入り口はプラットフォームになっており、トラックの荷台からそのままフォークリフトで荷物を積み降ろしできるようなつくりになっています。

 

こうした形式の倉庫の場合、盛土してある分、余計に沈下が起きやすいのは前述のとおりです。さらに、この倉庫では、コンクリートの床面下に、かなりの密度で梁がつくってありました。

 

そのため、地盤は下がったものの床面は一緒に下がらず、ほぼ水平を保ったまま"浮いた"状態になっていたのです。

 

ぱっと見には問題がないのですが、倉庫内をフォークリフトが走り回るたび、床が抜けてしまうのではないかと思えるほどの激しい振動が起きるようになり、そこで調査依頼が来たというわけです。

 

調査用に仮に孔を開け、CCDカメラを入れて調べたところ、場所により20センチ前後の大きな空隙ができてしまっていることがわかりました。

 

この倉庫では荷物が生鮮野菜なので、床面にさほど大きな荷重がかかるわけではありませんでした。修正工事後は、フォークリフトが走っても異常な振動が起きることもなく、安心して仕事ができるようになったと、うかがっています。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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