学生が主体で取り組む海外人材の育成
2014年からは、公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)の「外国人技能実習制度」を活用したプロジェクトがスタートしました。
これは、開発途上国の経済発展と産業振興のために、先進国に実習生を送り、技術を習得させるのが目的です。
実習生を受け入れるためには、日本と現地の受け皿が必要です。私たちの会社では名古屋の本社を実習場所にし、技術を習得したインド人が母国へ帰ったときにインドで活躍できるように現地でのマーケット開拓を進めているところです。
2015年9月には、インドのビジネススクールで私の会社の事業についてプレゼンをした際、現地の優秀な学生2人から将来日本でインターンとして働きたいと声が上がりました。彼らの熱意が伝わり、私も是非彼らを育てたいと思ったため、スカイプによる日本語レクチャーを始めました。
インドの学生と英語で会話をしながら教えるのも、学生たちです。「インドのテント業界について」「商業施設のテント事情について」など毎回、課題を渡してレポートを書かせたり、テントの知識や日本の基本的なビジネスマナーについて伝えています。
こうして学んだ海外の学生は、将来的に技能実習制度を活用する際に、現地と日本で活躍するスタッフとして育ってくれるでしょう。
現在、日本では東京オリンピックに向けて街中のテント張り替えやスタジアムで使用する各種テントの受注が見込まれています。しかし国内では人手が足りず、海外の人材を日本へ呼び、人材不足を解消するのと同時に日本のものづくりを学んでもらえればと考えています。
オリンピックは良い機会!? 職人魂を学生に…
日本のテント会社の件数でピークだったのは、昭和40〜50年代。そのころは4000〜5000社ありました。今は全国で1000社を切るほどです。減少した要因は、グローバル化が進み、賃金の安い海外の労働力に生産を頼ることが多くなってきたからです。
日本人がものづくりに携わらなくなったということで、後継者不足につながっています。これはテントに限らず、どの業界でも製造業に共通していわれていることでしょう。優秀な人材は企画、経営の道を進み、ものづくりの現場に来なくなった。ものづくりの現場で働いても儲からない、といったイメージが定着しているのです。
私の会社も例外ではありませんでした。ものづくりに憧れ、志望してくれる人材がいない。それが、学生の情報発信力がネガティブなイメージを気持ちよいくらいにかき消してしまった。ものづくりが好きになる人たちの土壌を、もう一度新しくつくってくれているのです。
学生たち自身も現場に行って職人のサポートをしたり、テントの張り替えの夜間工事をしたり、一緒に参加しています。そこで職人魂のようなものも学んでいるのです。
こうした取り組みを通じて、国内で若手を育成していくのと同時に、これからは海外の人材に日本のものづくりの現場で活躍してもらうことも重要だと考えています。
少子高齢化の影響もあり、これから現場の人材不足はもっと深刻になるでしょう。そこでその不足分を海外の人材に委ねようというプロジェクトをスタートさせました。学生が主体となって進めている海外進出プロジェクトと同時に、現地での人材育成に力を入れています。
日本のものづくりに興味を持ってくれた現地の学生に研修生、実習生として3年間、日本の現場で働いてもらうのです。2020年の東京オリンピックに向けて現場の数は増えているので、経験を積む場所には恵まれています。
そうした現場で、日本のものづくりに対する姿勢や、私の会社の技術を学んでもらう。吸収したことを母国に持ち帰り、母国で自分たちのビジネスを広げてもらうのが目標です。
それもすべて、私一人ではできませんでした。長期インターンシップの学生たちがつくってきた土壌なのです。