今回は、事業用地の売却において、買い手候補が中国の産廃業者であったときの事例を見ていきます。※本連載は、株式会社おひさま不動産の代表取締役である渋谷幸英氏の著書、『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』(雷鳥社)の中から一部を抜粋し、簡単には処分できない田舎の不動産の売却術をご紹介します。

田舎とはいえ3000坪の一等地だったが・・・

畑の真ん中で営業する私に突然ビッグチャンスが訪れたのは、創業してまだ1年も経たない時のことでした。当初はまだ、自分で必死に作ったダサいホームページしかなかったというのに、それを見て、ビッグチャンスの主は電話を下さったのです。

 

私は、3000坪の事業用地を売ることになりました。その土地は、田舎といえども一等地です。周りには田んぼが広がっていますが、土地柄、それは仕方ありません。

 

どういう土地柄かというと、大通りの両わきの田んぼを埋め立ててホームセンターやスーパーマーケット、飲食店などを建てているような、田舎の特徴そのままの土地柄です。

 

元々が田んぼなので、地盤は緩いです。東日本大震災の時にはドラッグストアなどの建物の基礎がひび割れるどころか、基礎ごと地面から浮き上がってしまったほどです。

 

このような土地であっても、事業用地であればさほど問題にはなりません。人通りがあるか、集客できるかということの方が、地盤の緩さよりも大事だからです。この土地に正式な購入の申し込みが入ったのは、売りに出して1カ月ほどたった時のことでした。その時は本当に喜んだのですが、よくよく話を聞いてみると、中国の産廃業者だったのです。

地域一丸となった反対表明に購入を諦めた産廃業者

この土地の裏手には広大な田んぼが広がっているというのに、そこに産廃業者が来たら、田んぼはどうなってしまうでしょう? 油が染み出て田んぼがダメになってしまうのではないか?

 

そんな不安があったので、私は地元の名士の方々に、相談して回りました。

 

「どうしたらいいでしょう? ここ、売って大丈夫でしょうか?」と尋ねる私に、彼らは口々に言いました。

 

「渋谷さん、そんなところに売っちゃったら、ここでこれから商売していけなくなっちゃうよ」

 

私はまだ開業したばかりだというのに、もう廃業しなくてはならないのだろうかと思うと、本当に自分の不運を嘆きました。でも、嘆いていても何も解決はしません。私は売主さんに事情を説明し、産廃業者に売れば私は地元で商売できなくなるので、地元から受け入れてもらえる業者に売らせてもらえないかと相談しました。売主さんは、私の事情を察して下さり、快諾して下さったことは、今も思い出すたびに感謝の念がこみ上げてきます。

 

それでも相手はなかなか諦めてくれません。仕方ないので、私は売却予定地を取り仕切る区長さんを訪ね、反対運動を行う旨の文書に署名してもらいました。区長さんは、「そんなのに来てもらったら、絶対に困る」と言い、すぐに署名して下さいました。役所にも、私が一人で行っても相手にしてもらえないので、元農業委員長のツテを伝って一緒に行ってもらいました。

 

こうして、地域で一丸となって反対の意思表示をしていった結果、ようやく産廃業者は諦めました。面倒なことになるくらいなら、もっとほかの土地を探そうと思ったようです。

 

かくして、私は命拾いをしたのです。

本連載は、2017年3月25日刊行の書籍『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続した田舎の困った不動産の 問題解決します

相続した田舎の困った不動産の 問題解決します

渋谷幸英

雷鳥社

不動産を相続して、誰もがハッピーになれるわけではありません。田舎の不動産は困った問題を抱えていることが多いからです。田舎の不動産、売りたい人も買いたい人も必読の1冊。 「買ったときには家が建つ土地だったのに、…

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