今回は、「農地」を転用して雑種地にしたい場合、どこに相談すべきかを見ていきます。※本連載は、株式会社おひさま不動産の代表取締役である渋谷幸英氏の著書、『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』(雷鳥社)の中から一部を抜粋し、簡単には処分できない田舎の不動産の売却術をご紹介します。

「農地」を農地以外に利用する場合は許可が必要

最初に、基本的な用語と農地を農地以外に転用する場合の手続きについて、簡単に説明しておきたいと思います。

 

まず、農地転用というのは農地を農地以外に使いたい場合の許可のことです。大抵は農業委員会に行って許可を申請します。そして許可を得られれば農地以外に使うことができるのですが、この許可だけで畑だった地目が宅地に変わるわけではありません。地目を変えるには法務局で地目変更しなくてはなりません。

 

農地転用できるかどうかは、農地の種類によってだいたいわかります。農地は5種類に分かれています。このうち農地転用の可能性が高いのが、第2種農地と第3種農地です。逆に可能性が低いのが、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地です。

 

農地を農地以外の地目に変更するには⑴農地転用の許可を得た後地目変更する⑵非農地証明を取った後、地目変更する⑶法務局で直接地目変更するの3パターンがあります。

 

〝非農地証明〟とは、農業委員会から「ここは農地ではありませんよ」と証明してもらうことです。

 

ここまで分かったところで、本題に入りましょう。

農業委員会に問い合わせても埒が明かない!?

農地を農地以外に転用できるかについては、農業委員会ではなく、田舎の農地転用に詳しい行政書士や土地家屋調査士、不動産屋、あるいは知り合いに農業委員会の人がいる場合には個人的に聞いてみることをお勧めします。

 

★農業委員会に聞いても、積極的に教えてくれない

 

農業委員会は基本的に〝農地を守る立場〟です。ですので、農地が減ってしまうような助言を積極的にしてくれないと思ってください。このことについて、私が最近農業委員会に電話で2度、問い合わせをした時の内容をお読み下さい。

 

《1回目》

 

私:××町○番地の牛小屋の跡地なのですが、所有者の方は地目は雑種地だと言っていて、雑種地として固定資産税も払っているのですが、登記簿を取ったら地目が畑になっていました

 

担当者:あー、地目変更、忘れちゃったんだね

 

私:はい、そうみたいなんです。で、今から雑種地に地目変更したいのですが、非農地証明を取って、地目変更はできませんか?

 

担当者:ちょっと待ってね、調べるから(しばし合間)

 

担当者:だめですね。ここは1種農地だから

 

私:でも、敷地のすべてがコンクリート敷きになっていて、鉄骨の骨組みもありますし、プレハブの物置小屋まであるんですよ。これって、畑に戻せないと思うんですが・・・

 

担当者:そうかもしれませんが、決めるのは県ですからね。私にはダメとしか言いようがないですよ。

 

私:でも、このまま放置していても建物が朽ち果てていくだけですし、持ち主もそのお嬢様も困っているんです。

 

担当者:そうですか。でも、農業委員会はあくまで農地を守る立場ですから。

 

このコンクリート敷きの土地の、一体どこが農地なのかと言いたいところを抑え、私は電話を切りました。それでも諦めきれなかったのと、以前、ほかの市では1種農地でも地目変更ができたことを思い出したため、もう一度、電話してみることにしました。

 

《2回目》

 

私:たびたびすみません。前に○市で同じような案件を扱った時には、非農地証明を取らなかったのですが、法務局で地目変更ができました。今回も、そのようにしていただくことはできないでしょうか? 法務局から照会が来たとき、ここは農地ではないと言っていただくことはできませんか?

 

担当者:んー、確約はできませんね。

 

私:そうですか・・・。では、何か救済策はないんですか?

 

担当者:んー、ないわけではないですが・・・

 

私:例えば、どんな救済策がありますか?

 

担当者:その牛小屋は、建ててから20年以上経っていますか?

 

私:経っています

 

担当者:それならば、非農地証明が取れるかもしれないですね

 

私:かもしれないということは、確かではないということですか?

 

担当者:そうですね。

 

さて、ここまでお読みいただいて、もうお分かりかと思います。農業委員会に、漫然と「農地転用ができるか」と聞けば、明らかに転用できる場合以外は「できない」と言われてしまいます。

 

農業委員会は〝農地を守る立場〟なのですから、仕方ありません。

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    本連載は、2017年3月25日刊行の書籍『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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