農業委員会が大丈夫だと言っても、権限は法務局に…
前回の続きです。
そこでさっそく、地目変更をするために法務局に電話したところ、次のような返事がありました。以下、私と法務局職員のやり取りです。
私「農地から雑種地に地目を変更したいのですが」
職員「農業委員会の許可はもらっていますか?」
私「ええ。もう30年も使っていない土地なので大丈夫だと聞きました」
職員「で、その土地は今どのような状態ですか?」
私「更地です」
職員「更地っていうことは、耕せばすぐに農地に戻せるっていうことですよね。だったら、厳しいです」
私「でも、農業委員会は大丈夫だって言っています」
職員「農業委員会はあくまで、その場所が農地かどうかを判定するだけです。地目を決める権限は、あくまで法務局にあります」
私「でも、もう30年も使っていないですし、日当たりも悪いし、農地としては狭いので、農家に売るのは厳しい場所です。せっかく、資材置き場として使いたいというお客様がいるのに地目は変更できないのですか?」
職員「すでに資材置き場として使っているならまだしも、耕せばすぐに農地に戻せる以上、難しいです」
私「そんなこと言われても、売れない以上資材置き場として使えないじゃないですか? 売れたら買主さんが資材置き場として使うというのでは、だめなのですか?」
職員「難しいですね」
これにはホトホト困りました。結局、買主が10万円の手付金を支払って契約した後、決済を待たずに資材置き場として使い始めることにしました。その上で地目変更をすることにしたのです。
地目変更できないなら、法務局は書類は受け取らない!?
★法務局から地目変更できないと言われたが、強硬手段で地目変更に成功
契約が済むと、買主さんは購入予定の土地に古い車や部品を置くことになりました。ところがこれが一苦労。
「土地がズブズブで、車を置くと沈んじゃうんだよね。どうしよう」
買主さんが慌てて電話をかけてきました。
「なるべくぬかっていないところを選んで、置くことはできませんか?」
「んー・・・。わかった。とりあえず、ブルーシートでも敷いて、その上に置くようにしますよ」
こうして、買主さんはなんとか、廃車同然の車を何台かと、盗まれてもよいような部品を並べたのです。ところがその後すぐ、近所から警察に苦情の電話が行ってしまいました。
「隣の空き地がゴミの山になっている!」と。
警察から竹下さんに電話がいきましたが、竹下さんは逆に警察を怒鳴りつけたそうです。
「そうせな売れん言うからやっとるのに、何言うとるんや! それとも、土地が売れなかったら警察が責任とってくれるんか?」と。警察は「いや、ただ近所から苦情が来たからご連絡しただけです」と言い、それで話は済んでしまったそうです。
あとは地目変更が終われば売れる。そう思ってホッとしたのも束の間、いつも懇意にしている土地家屋調査士のOさんにこの話をすると、「そんなの、地目変更なんてできませんよ。絶対無理!」と言い出しました。
「本当ですか⁉」
「だったら、どうすればよかったのですか?」と聞くと、「砂利を埋めちゃうとか、畑や田んぼに戻せないようにするのが一番かな」との答え。
「そうだったんですか・・・」
どうしよう、と思っていると、Oさんが「あれ? ちょっと待って下さいよ」と言います。
Oさんはご自分の頭を整理するかのように天井の方を見つめながら腕組みすると、「でも、法務局は地目変更の書類を受け取ったんですよね?」と聞いてきました。「はい」と答えると、「それなら、地目変更できますよ」と、さっきとまったく逆のことを言うのです。
「どういうことですか?」
「どういうも何も、法務局は地目変更できないものなんか、書類さえ受け取りませんからね。書類を受け取ったってことは、変更できるってことですよ」
そしてOさんは、「まったく、法務局は素人には甘いんだよ」と不満を漏らし始めました。「私なんかがこんな案件持って行ったら、一発でだめって言われますよ」と。
まるで狐につままれたような感覚でしたが、私はOさんの言葉を信じることにしました。何十年も土地家屋調査士の仕事をしているOさんが言うのだから、間違いないと思ったのです。
3週間がたち、法務局に電話してみると、「地目変更、完了しています」との嬉しい回答。やっぱり、Oさんの言った通りでした!実際に、地目が「雑種地」となっているその3文字を見た時は、心の底からホッとしました。