今回は、農地の種類によって異なる「農地以外への転用」の可能性について見ていきます。※本連載は、株式会社おひさま不動産の代表取締役である渋谷幸英氏の著書、『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』(雷鳥社)の中から一部を抜粋し、簡単には処分できない田舎の不動産の売却術をご紹介します。

農地は「5種類」に分類される

農地を農地以外の地目に変更できるかどうかを調べるには、あなたの農地がある市町村の農業委員会に問い合わせて、農地の種類を聞いて下さい。

 

農地の種類は下記の図表にあるように5種類に分類され、どの分類に該当するのかによって、農地転用の許可を得て農地以外の地目に変更できる可能性が高いか低いか、ある程度の目安がわかります。

 

[図表]農地の種類と転用の可能性

 

①農用地区域内農地であっても、例外的に農地以外に地目変更できる場合がある

 

農用地区域内農地というのは、見渡す限り農地が広がっているような場所です。そして、税金を投入して土地改良事業を行っています。ですので、原則的には農地以外の地目に変更はできません。ただし、例外的に地目を変更できる場合があります。

 

例えば、コンビニを建てる場合などです。その場合であっても、まずは「農振除外」という手続きがあり、その後、「農地転用の許可」を経て、ようやく地目を変更することができます。

 

ただ、農用地区域内農地は原則的に地目を変更できないので、あなたの農地が例外的に許可される要件を備えているのかどうかについては、農地転用の許可に詳しい行政書士、土地家屋調査士に相談して下さい。

 

②第1種農地であっても、例外的に農地以外に地目変更できる場合がある

 

第1種農地というのは、農用地区域内農地と同じように、見渡す限り農地が広がっているようなエリア内の農地のことです。農地としての生産性が高いため、基本的には農地以外に地目変更することができません。ただ、第1種農地ならば絶対に地目変更できないかというと、そうではありません。

 

例えば、次のような場合には可能性があります。

 

(1)農地が広がっているエリアから少し離れた場所や、住宅に囲まれたような場所にある

(2)建物を建ててから20年以上経過している

(3)耕作放棄してから20年以上経過して、なおかつ(1)のような場所にある

 

③第2種農地か第3種農地なら、農地以外に地目変更できる場合が多い

 

農業委員会に問い合わせた結果、あなたの農地が第2種農地か第3種農地である場合は、農地以外に地目変更して売却できる可能性が高いといえます。

 

ただ、あなたの農地が第2種農地だった場合で、建築基準法の条件を満たしていないために家を建てられないような場所にあるのなら、地目を変更できない可能性が高いので、注意が必要です。これについては、本書の第3章で紹介した船越光男さんのケースを参照して下さい。

地目変更の最終的な権限は「法務局」にある

★農業委員会が許可しても法務局が許可しなければ地目変更はできない

 

農業委員会は、農地を農地以外に使ってもよいと許可する立場です。畑だった地目を宅地に変える権限までは持っていません。その権限は誰が持っているのかというと、法務局です。

 

そしてここでのポイントが〝現況主義〟です。例えば農業委員会が宅地にしていいよと言った畑でも、今現在トウモロコシがたくさん植えられているのなら、法務局はこの土地を宅地とは認めません。なぜならば〝現況〟は畑だからです。

 

これでホトホト困ったのが、竹下一郎さんのケースです。次回は、竹下一郎さんのケースを見ていきます。

本連載は、2017年3月25日刊行の書籍『相続した田舎の困った不動産の問題解決します』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続した田舎の困った不動産の 問題解決します

相続した田舎の困った不動産の 問題解決します

渋谷幸英

雷鳥社

不動産を相続して、誰もがハッピーになれるわけではありません。田舎の不動産は困った問題を抱えていることが多いからです。田舎の不動産、売りたい人も買いたい人も必読の1冊。 「買ったときには家が建つ土地だったのに、…

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