前回は、「育てる投資」の実践において、投資期間を「約10年」で設定する理由を説明しました。今回は、世界高配当公益株式を組み入れる理由などを紹介します。

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長期保有だから得られる相対的なメリット

それでは、世界高配当公益株に分類される株式は、一般的な世界株式の一群と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。

 

下記の図表1で、2006年から2016年までの、世界高配当公益株式のリスク・リターンを見てみます。前にも見たように、横軸がリスクで、右に行けば行くほどリスクが高い、すなわちこの期間の値動きが激しかったことを意味します。縦軸はリターンで、この期間に達成した過去の収益率を年率換算して示しています。

 

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[図表1]各株式のリスク・リターン特性(現地通貨ベース)

※期間:2006年7月~ 2016年7月、リスクは月次リターンの標準偏差
※世界高配当公益株式:MSCI世界高配当公益株価指数、日本株式:TOPIX、世界株式:MSCI世界株価指数、
米国株式:S&P500種指数、欧州株式:MSCI欧州株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数(すべ
て現地通貨ベース)
出所:ブルームバーグ、トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※期間:2006年7月~ 2016年7月、リスクは月次リターンの標準偏差
※世界高配当公益株式:MSCI世界高配当公益株価指数、日本株式:TOPIX、世界株式:MSCI世界株価指数、 米国株式:S&P500種指数、欧州株式:MSCI欧州株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数(すべ て現地通貨ベース)
出所:ブルームバーグ、トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
 

これで分かるのは、世界高配当公益株式は同じ株式でありながら相対的にリスクが低いことです。これは先に述べた事業内容の特性に加え、公益株式の中でも特に「高配当」の株式を選別して投資していることも関係しています。

 

株式投資から得られるリターンは、株価の値上がりだけと思う方もいるかもしれませんが、もう一つ大事なリターンの要素が配当です。企業が決算を行い、その期の収益に応じて株主に支払うお金が配当金です。この配当金はもちろん業績が悪ければゼロになることもありますが、株価の値上がり・値下がりとは異なり、投資期間が長くなるほど積み上がっていき、トータル・リターンを下支えしてくれます(図表2)。この配当が相対的に高い株式を、公益株式の中から選んで投資するよう設計したのがこの投資信託なのです。

 

[図表2]世界高配当公益株価指数の投資収益の内訳(現地通貨ベース)

※世界高配当公益株式:MSCI世界高配当公益株価指数(現地通貨ベース)
※期間:1994年12月~2016年7月末
※配当金再投資分は配当収入と値上がり益に按分
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※世界高配当公益株式:MSCI世界高配当公益株価指数(現地通貨ベース)
※期間:1994年12月~2016年7月末
※配当金再投資分は配当収入と値上がり益に按分
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
 

通貨・銘柄の分散でリスク回避

このような投資の特性を実現するため、公益株式の中から高配当のフィルターで選別することに加え、さらに2つの分散投資が必須条件となります。

 

第一に、通貨の分散です。日本の投資家が海外に投資する場合、円ではなく米ドルや現地通貨で投資することになるため為替変動リスクにさらされます。為替変動リスクを低減するためには通貨分散が欠かせません。この投資信託で言えば、ひとつの通貨に偏らないように通貸別の組入比率を意識しています。

 

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また、組み入れる銘柄も徹底して分散します。公益株式投資には特有のリスクとして天災リスクがあります。ハリケーンや地震などの自然災害などによってインフラが寸断されて大きな損害を被る可能性があるため、地域リスクを低減するために地域分散も考慮して、あらゆる方面の分散投資を徹底しました。公益企業だからといって堅実な経営を心がけている企業ばかりとは限りません。アメリカの総合エネルギー会社エンロンは多角経営に乗り出し、簿外債務の隠蔽をはじめとする不正が明るみに出て2001年に破綻し、世界に衝撃を与えました。2005年当時はまだその衝撃が薄らいでいなかったので、経営リスクを避けるという意味でも分散投資は欠かせませんでした。

 

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本連載は、2016年10月31日刊行の書籍『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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萩野 琢英

幻冬舎メディアコンサルティング

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