前回は、「エキゾチックベータ」と呼ばれる投資信託の特徴などを説明しました。今回は、余剰資金で行いたい、「ハイリターンを狙う投資」について見ていきます。

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単一市場・単一投資対象に絞り込んだ集中的な投資

これまで見てきたように、資産を保全するためには、何よりもまず「預貯金でなければならない資金」と、預貯金の一歩先を行く低リスク・低リターンの「欲張らない投資」があり、その上で資産を成長させるためにしっかり利益を取れる中リスク・中リターンの「ちょっと欲張った投資」、高リスク・高リターンの「育てる投資」に分けることが重要です。

 

しかし、人によっては余剰資金によって、大きなリターンが期待できる代わりにリスクも大きいことを覚悟して臨む「スパイス的な投資」を加えるという選択肢もあります。

 

「スパイス的な投資」とは、流動性リスクを許容してリターンを追求する投資です。すなわち、「欲張らない投資」「ちょっと欲張った投資」「育てる投資」では禁じ手となっていた、単一市場・単一投資対象に絞り込んだ集中的な投資を意味します。

 

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もちろん、単一市場・単一投資対象とはいっても、リスクを最小化するために分散投資は必須条件ではありますが、ハイリターンを追う以上、これまで見てきた「徹底した超分散投資」とは異なる投資手法が求められます。

暴落リスクがついて回ることも理解しておく

「スパイス的な投資」において流動性が劣ることから引き起こされる問題(流動性リスク)を十分に理解しておくことも重要です。なぜなら、「スパイス的な投資」の投資対象は人気がある時には「買いが買いを呼ぶ買い上がり相場」、人気がなくなった時には「売りが売りを呼ぶ売り崩し相場」に見舞われやすいからです。

 

「買い上がり」とは、大きな買い注文によって需給バランスが崩れて価格が大きく上昇し、その上昇を目にしてさらに買い注文が集まって価格上昇し、さらなる買い注文を呼ぶスパイラル現象を指しますが、投資信託などへの投資でも同様のことが発生します。

 

投資信託は投資家から受け付けた資金で株式などの資産に投資しますが、仮に大量の資金が流入し、流動性のない特定の資産を通常の取引量に比べて大きな金額で購入し続けると、価格がかさ上げされる格好で上昇し、その資産を保有している投資信託自体の基準価額も上昇、投資家はあたかも市場が好調であると誤解してしまうのです。

 

その結果、投資家はさらに投資信託への買い注文を行うことで、「買いが買いを呼ぶ買い上がり相場」を誘引するのです。

 

2006年から2007年の中国株式相場の際の中国株式ファンド、2009年から2011年のブラジル・レアル通貨高の際のレアル通貨選択型ファンド、2013年から2014年のMLP相場におけるMLP関連ファンド、2014年から2015年のバイオ株式相場のバイオ株式ファンドなどは個人投資家による投資信託への大量購入を背景とした集中的な継続買いによって引き起こされた「買いが買いを呼ぶ買い上がり相場」と言っていいでしょう。

 

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これらは当初、大量の買い注文が投資信託に継続的に入っていたので、その買いで安定した上昇相場を形成、投資家に安心感を与え高値づかみを誘引した一方、資産価格は適切な水準から大きく割高になっていきました。このため下落時には買い手も少なく価格変動が非常に大きくなり、最後には暴落が発生、その過程では多くの個人投資家は傍観するしかなかったのです。

 

売却を行ったのは下げた後、価格の底の近辺だった方が多かったはずです。個人的には2015年から発生しているREIT相場におけるREITファンドも要注意と見ています。

 

2000年代以降、株式などのリスク資産の価格変動特性が大きくなった理由の一つには個人投資家が投資信託を通じて多くの資金を投資することが一般化してきているからと考えています。個人が購入している投資信託は日々設定解約されているものがほとんどですが、それらは解約を受けた時には解約金額分だけ、その日に保有している資産を無理やりにでも、市場を売り崩してでも売却せざるを得ないのです。

 

それでは、次回はどのような市場がスパイス的な投資に向いているのかを具体的に見ていきましょう。

 

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本連載は、2016年10月31日刊行の書籍『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

萩野 琢英

幻冬舎メディアコンサルティング

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