キャッシュフローを考慮した投資リターンの計測方法
グロス利回りやネット利回りには物件価格や賃料などから簡単に計算ができるメリットがありますが、物件がいくらで売却できるかによって最終的な投資のリターンは変わってきます。
また、不動産の場合、毎月の家賃収入によるキャッシュフローがありますので、どのタイミングで資金の出入りがあるかという時間軸も併せて考える必要があるのです。このキャッシュフローを考慮に入れた投資リターンの計測方法がIRR(内部収益率)です。IRRとは、投資のキャッシュフローを想定し、その現在価値がゼロになるような割引率を計算したものです。例えば、10万ドルで物件を購入し、毎年合計で1万2000ドルの家賃収入があるとします(単純化するため、グロスの年間賃料で考えます)。5年間保有し、購入時と同じ10万ドルで売却したとします。
この場合、キャッシュフローは、下記図表のようになります。
【図表】キャッシュフローの把握(レバレッジなし)
当初のキャッシュフローは、マイナスの10万ドル、その後1年目から5年目までは1万2000ドルずつのプラスのキャッシュフロー。さらに、5年後には物件の売却金額がプラスになります。このようなキャッシュフローを、すべて同じ金利で現在価値を計算していきます。
例えば、1年後の1万2000ドルは、割引率がr%とすれば、1万2000÷(1+r)、2年後の1万2000ドルは、2年分の割引ですから、1万2000÷(1+r)2……といった具合です。5年間のキャッシュフローを共通の金利r%で現在価値にしたものの合計が、当初の投資金額である10万ドルと同じになるr%が、この投資のIRRになります。
このケースのIRRは12%となりますが、売却金額が10万ドルよりも高くなればIRRは上昇し、逆に売却価格が10万ドルよりも低くなれば、IRRは12%より低くなります。
IRRが想定しているリターンより高ければ投資可能
こうして計算したIRRが、自分の想定しているリターンより高ければ投資可能という判断になりますし、逆に目標のリターンより低ければ投資を見送るという判断ができます。IRRの計算はエクセルのような表計算ソフトにキャッシュフローを入力して、IRR関数を使えば、簡単に計算できます。
不動産投資は不動産の購入から賃貸だけではなく、売却までを考えて投資をしていかなければなりません。つまり、いわゆる「出口戦略」をいかに考えるかがとても重要になってきます。賃料と購入価格から利回りを計算しても、その年の利回りがどうなっているかがわかるだけで、最終的なその物件に対する投資リターンは計算できません。売却価格とそのタイミングを含め、投資利回りをIRRで計算することではじめて、プロジェクト全体で見た投資リターンを検討することができるのです。