前回は、国によって異なるローンの条件について解説しました。今回は、不動産投資で参考にする「利回り」の計算法を見ていきます。

投資リターンに影響するのは家賃収入だけではない

不動産投資において、投資リターンの計算は購入前に慎重にしておく必要があります。インカムゲインと呼ばれる賃料収入が大きなウエートを占める不動産投資では、賃料と物件価格から利回りを計算するのが一般的です。しかし、家賃収入だけが投資のリターンに影響を与えるものではありません。最終的に物件をいくらで売却できたかによっても、投資利回りは大きく変わってくるのです。

 

 

不動産の投資リターンは比較的簡単に計算できる売却価格を考えない利回りと、売却価格まで織り込んだ利回りの2つに大きく分けて考えます。

グロス(表面)利回り、ネット(実質)利回りの計算法

まず、売却価格を考えない利回りの計算を説明します。

 

最もシンプルなのが、グロス(表面)利回りと呼ばれる、賃貸収入を物件価格で単純に割ったものです。例えば、家賃1000ドルの物件を10万ドルで購入すれば、年間の家賃収入は1万2000ドルとなり、利回りは12%となります。グロス利回りは、大まかな賃貸利回りを知るためには有効ですが、国や地域によって家賃から差し引かれるコストが変わってきますから、グロス利回りが高いからと言って、本当に高利回りとは限らないので注意が必要です。

 

 

一般に先進国のほうが新興国に比べ、コストが高くなる傾向があります。また新築物件より中古物件のほうが修繕費用やメンテナンスコストが高くなりがちです。賃貸収入だけではなく、物件保有にかかるコストも反映させて計算するのがネット(実質)利回りです。

 

例えば先ほどと同じ、10万ドル、家賃1000ドルの物件に、管理費用が月100ドル、固定資産税などの諸費用が年間1000ドルかかるとします。購入時に物件の修繕に1万ドルかけたとすると、ネット利回りは次のようになります。

 

{(1000ドル-100ドル)×12-1000}÷(10万ドル+1万ドル)=8.9%

 

ネット利回りの計算では、どこまでのコストを入れるかによって利回りが変わってきます。また、修繕にかかるコストを費用と考えるのか、資産価値の向上と考えるのかによっても計算方法が変わります(費用として考える場合、計算式の分子にマイナス要因として計上)。

 

いずれにしても、グロス利回りは簡単に計算でき、不動産広告などでもよく使われる数字ですが、ネット利回りのほうが、投資の実感に近いリターンであることは知っておきましょう。

 

[図表]グロス利回りとネット利回り

本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『究極の海外不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
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