今回は、大地主の事業承継における遺産の「公平」な分割に潜むリスクについて見てきます。※本連載では、株式会社鹿谷総合研究所の代表取締役で、公認会計士・税理士でもある鹿谷哲也氏の著書『繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと決断力の有無で大きく分かれます』(新評論)の中から一部を抜粋し、大地主が今後も「繁栄」していくための事業承継の進め方を解説していきます。

不動産の平等な分割が「無駄遣い」につながる?

遺産分割というと、ほとんどの方は平等に分けることばかり強調します。確かに普通の不動産オーナーであれば基本的にそれでいいと思いますし、私の事務所でも家族構成とか各相続人の経済状況、資産内容等々によってはキッチリと分けることも少なからずあります。

 

ところが大地主さんの場合には全く違ったやり方で遺産分割するケースがほとんどです。つまり後継者となる相続人がほとんどの不動産を相続し、他の相続人には金融資産であるとか自宅の敷地を渡す程度です。

 

あるいは不動産管理会社を設立して、そこの役員に就任してもらい給与を支給することでバランスを取るということもあります。

 

その理由について少し考えてみましょう。もし相続において兄弟間で不動産を平等に分けたらどうなると思われますか?恐らくほとんどのケースで、ご自分の思い思いの考えで行動すると思います。

 

例えば売却した資金で人生をエンジョイする人もいるでしょうし、そのまま保有し続ける人もいます。その時々の経済状況や人生に対する考え方の違いで様々な行動パターンに分かれるということです。いずれにしても本家の所有する不動産は急激に減っていきます。

 

それでは特定の相続人にほとんどの不動産を相続させることにしたらどうでしょうか? 自分のものになったからといって、これ幸いと勝手に売却し無駄遣いしてしまうでしょうか?もちろん皆無とは言いませんが、ゼロに近いのではないかと思います。

 

人間というのは自分だけが得しようとはあまり考えないものですし、無駄遣いしようにも他の兄弟が許さないでしょう。もし特定の承継人がほとんどの財産を相続したとしたら、むしろ減らさないように努力しようとします。

 

このように一見良さそうな公平な分割というものは巨額の財産も一瞬にして失くしてしまう危険性を孕んでいるということは忘れないで下さい。

先祖から受け継いで来た土地はできるだけ減らさない

戦後の日本民法では公平を旨として子供には原則として平等に遺産分割するよう定めています。

 

これについては私も基本的に賛成なのですが、大地主の場合には一般企業と同じく事業承継という観点から別の見方をしています。

 

というのは先祖から代々受け継いで来た土地というものは多くの場合、できるだけ減らさないで次の世代にバトンタッチすることが期待されているからです。にもかかわらず今は公平に分配することが当然のような風潮にありますので、こうした考え方を他の相続人に納得してもらうことが大変難しくなっています。

 

なお、土地というものは私有財産が認められているからといって全く個人の自由にしていいというわけではありません。草ボウボウでは美観的にも好ましくないですし害虫が発生する可能性もあります。

 

建物にしても空き家のまま放置していることは火災とか犯罪の可能性を高めますし、土地と同様、美観上も大いに問題です。

 

最近、農地の耕作放棄地が増えていますが、このようなことは望ましいことではありません。農地所有者としての当然の義務を果たさないのなら何らかのペナルティーを科すべきではないかと思います。

本連載は、2017年2月25日刊行の書籍『繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと決断力の有無で大きく分かれます』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと 決断力の有無で大きく分かれます

繁栄する大地主 衰退する大地主 節税プランの良し悪しと 決断力の有無で大きく分かれます

鹿谷 哲也

新評論

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