後継者をいかに立派な人格者として育てるか?
私のお客様で最近何人もの方が事業承継という課題に直面するようになってきました。いずれも関与して数十年になる方ばかりですが、当初は相続人であった方も今や承継される立場になってきたというわけです。
最初お目にかかった時は様々な課題があり、その解決に追われる毎日だったのが、時が経つのは早いものです。いつの間にか次世代へのバトンタッチという課題に直面することになったのです。
何かのご縁があって今まで長くお付き合いさせていただいているわけですが、何代にも亘ってこうして頼っていただいていることは大変ありがたいことです。是非、事業承継を成功させてあげたいと思っています。
ところで事業承継というと莫大な財産をできるだけ減らさないで次の世代に受け継いでいくことですが、そのために大切なことは後継者をいかに立派な人格者として育て上げられるかということです。
不動産賃貸業の場合には様々な方々の手助けがなければうまく行きませんが、自分本位の方には金目当ての人しか近寄って来ません。ところが人格者の周りには自然と優秀な方が現れるものです。
ただし、増々厳しくなる不動産賃貸業、人格者であってもおっとりノンビリでは困ります。他の物件との差別化を図るべく常日頃から様々な情報を入手する必要があります。
そのためには本とか雑誌から知識を得ることはもちろんですが、不動産賃貸業にマッチした資格がいくつかありますので、できるだけ早い段階でそうした資格を取ることをお勧めします。
次ページ以降にお勧めしたい資格、お勧めしたい新聞、雑誌、書籍等を紹介しておりますので参考にして下さい。
資格があれば当然ながら名刺に書けますし、様々な情報にアクセスすることができます。また資格を更新するには一定の研修を受ける必要があるのですが、そうしたことも知識の維持には大切なことです。
因みに公認会計士の場合には年間40 単位取らなければならないのですが、原則として1単位取るのに1時間の研修を受ける必要があります。もし必要単位を満たしていなければ免許剥奪ですから大変です。そこで私もよく公認会計士の研修会場に行くのですが、90 歳は軽くオーバーしているご老人が半分居眠りしながら講師の話を聞いている姿を見かけます。
私はそこまで現役を続行するのはムリでしょうから、できるだけ早く息子に事業承継したいと考えています。幸い、会計士の試験内容が合っているのか、今のところ真面目に勉強している様子。親としては嬉しい限りです。
不動産オーナーにとって親和性の高い資格
AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)
FPの最上位の資格をCFP(サーティファイド:公認されたという意味)と言いますが、アフィリエイテッド(Affiliated)とは、それに関連した資格という意味です。
因みに公認会計士は英語でCPA(シーピーエー)と言いますが、これはサーティファイド・パブリック・アカウンタントの略です。「公認された公の会計士」という意味です。
ところで、これらの資格はできてから30 年以上になりますが、平成28年6月1日現在における登録者数は次の通りです。
AFP: 154,948人
CFP: 20,674人
参考までにAFPの試験範囲を下に掲載しておきました。いずれも学校では勉強しませんが、特に不動産オーナーにとっては必要な知識です。
[図表] AFPの試験範囲
不動産実務検定
これは一般社団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)という団体が認定している不動産経営に関する実務資格です。マスター資格、1級、2級の3段階ありますが、2級だけでも十分です。是非トライしてみて下さい。入居率アップの具体的ノウハウ等、かなり実践的な知識を身に付けることができます。因みに、この団体の講師が執筆した「空室対策のすごい技」(日本実業出版社)という本はお勧めです。実用的なノウハウが満載です。
宅地建物取引士
以前は宅地建物取引主任者と呼ばれていましたが、改正により税理士等と同じく「士」が付けられサムライ業になりました。
その関係からか合格するのが難しくなったとの噂です。この資格は不動産取引における代表的な資格なので余裕があるのであれば是非トライしてみて下さい。
因みに平成28年3月31日現在における登録者数と実際に就業している人数は次の通りです。登録はしてても仕事には従事していない方がかなり多いようですね。
登録者数 : 982,545人
就業者数 : 300,003人
日商簿記3級
お馴染みの簿記の資格ですが、この資格は有って損することは絶対にありません。ただし3級までで十分です。2級までは必要ありません。
3級の知識があれば基本的な複式簿記の仕組みは理解できますし、決算書の良し悪しも判断できるからです。テキストをやるだけでも合格は可能ですが、専門学校に行って勉強したほうが理解が速いと思います。
因みに欧米のエリートビジネスマンで複式簿記の仕組みとか決算書を理解できない方はほとんどいないそうです。あくまで噂ですが・・・。
不動産オーナーにお勧めの新聞、雑誌、書籍
全国賃貸住宅新聞 (毎週月曜日発行)
昨年、筆者は「行列のできる不動産相続相談所」というタイトルで12回分執筆しました。この本と同じような内容も取り上げています(本の原稿を書いた後で、その要約を新聞の原稿にすることがあるため)。
家主と地主 (月刊誌)
この雑誌には私も「複式簿記とアパマン経理実務の勉強」というタイトルで連載記事を書かせていただいたことがあります。当社のホームページに当時の記事をそのまま載せていますので参考にして下さい。アパマン経営に係る仕訳事例が紹介されています。
書籍
サラリーマン投資家による不動産投資や空室対策に関する本、あるいは税理士による節税に関する本などはできるだけ読まれたほうがいいでしょう。
「お勧めの本はありますか?」と聞かれることがよくありますが、1~2冊を厳選するのではなく少なくとも数十冊は読むべきでしょう。時代と共にやり方は違ってきますし、できるだけ多くの方から様々なノウハウを吸収したほうが良いからです。
因みに私の書籍代は新聞代等も含めて年間70万~80万円にはなります。これを30年以上続けていますので、それなりに出版業界に貢献したのではないでしょうか。もちろん、本を読むことでそれ以上の還元がありましたが・・・。
また研修費はだいたい年間80万~90万円ほどです。会計士とか税理士向けの研修だけでなく様々な業界のセミナーにも参加していますので、それなりにお金がかかります。
でもこうした勉強というのは学校の授業とは違って仕事に直接役立ちますので気合が入ります。
資産の承継方法が確定したら、次はいよいよ関係者への挨拶回りです。顧問の会計事務所、管理会社、金融機関、主なテナント、親戚等々が考えられます。
最初はもちろん親に同行してもらいますが、徐々に一人で行くようにします。人によっては緊張するかも知れませんが、少しずつ慣れるしかありません。何事もそうですが、一人で行動してみて初めて度胸がつくのだと思います。