専任募集の問題点は「業者による物件情報の独占」
前回の続きです。
一方、専任媒介による専任募集をみてみましょう。
[図表]
こちらの大家さんは、G社という業者にのみ媒介を任せています。G社はH社、I社、J社といった客付業者に情報を流します。たとえばH社がその情報をG社の許可を得て、自社の契約している不動産検索ポータルサイトに掲載したところ、お客さまからのお問い合わせがあり、ご案内して成約したとします。この場合のお金の流れは、基本的に一般募集の場合と同じです。
お客さまはH社に対して仲介手数料を支払います。元付け業者であるG社は、大家さんから広告料をいただきます。G社が直接お客さまと成約した場合は一般募集と同じで、お客さまからは仲介手数料、大家さんからは広告料と双方からお金をもらうことができます。両手取引です。
専任募集の問題点は、専任を受けた業者が物件情報を独占してしまうところにあります。つまりH社、I社、J社といった客付業者に情報を流さないのです。そちらの業者で決まった場合は、片手取引になるからです。直接お客さまを客付けできれば、両手取引になり、片手取引の2倍の売上げを期待できます。ただ、たとえそういう形であったとしても、ここでいうG社に客付力があってすぐに決まるなら、大家さんからしても問題はありません。しかし客付力がないケースも多く、そうすると空室が長引くため大家さんにとっては悲劇となります。
「管理の不満」は、話し合いで解消できることもある
こういう場合は、大家としてどのように対応したら良いかということですが、まず何よりも確認をしなくてはなりません。この例でいうと、G社が他社に対して情報を流しているかどうかという確認です。これは、大手不動産検索ポータルサイトで自分の物件をどの業者が取り扱っているかを見れば、すぐにわかります。
もしG社からしか物件情報が出ていなければどうするか。これはG社に対して率直に「他社にも情報を流すようにしてほしい」とお願いするしかありません。それでも独占してしまうようであれば(かつ空室が続いているようであれば)、G社に対して「このままではウチもキツイので、これからは専任媒介ではなく一般媒介でお願いしたい」と話すことです。G社は嫌がるかもしれませんが、空室が長引いては背に腹は代えられないという状況になってしまいます。これも誠実かつ率直に話せばわかってくれるはずです。
さらに専任募集の場合は、管理もお願いしているケースが多いと思われますが、この場合も対応は同じようにすれば良いでしょう。ただ、その業者が管理はきちんとやっているようであれば、「管理は今までどおりお願いするが、募集のみ一般媒介でお願いしたい」と話せば良いし、管理も不満があるようであれば、管理会社を変える必要があるでしょう。
ただ管理の不満というのは話し合いで解消することがあるので、安易に管理契約を解約するのではなく、必ず一度は管理会社と率直な話し合いの場を持つ必要があります。その場で不満を持っていることを一つひとつ伝え、どうして欲しいのかをはっきりと話します。その上で先方が誠実に答え、今後のことについて折り合えれば良し、折り合えなければ継続は難しいと話せば良いのです。
決して2~3の不満があったくらいで(それが信頼関係を失墜するような決定的なものであれば別ですが)、いきなり管理契約の解約を通知してはいけません。不動産会社として今後も客付け等でお世話になることがないとも限りません。
私は大家さんから管理会社についての不満を聞くことが多いのですが、ほとんどの大家さんは管理会社にその不満を伝えていません。そこが問題(つまり伝えるべきところを伝えていないコミュニケーションの問題)だということに、大家さん自身がまったく気づいていないのです。業者とのコミュニケーション術は本書の第2章にありますので、心当たりのある方はそちらを再度確認してください。