今回は、電力に代表される「産業の自由化」で何が起こるのかを見ていきます。※本連載では、一般社団法人エネルギー情報センターの理事で、エネルギーとビジネスに関する執筆・講演活動なども行う江田健二氏の著書、『エネルギーデジタル化の未来』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、電力自由化の現況と、その将来性を探ります。

自由化がなければ「スイカ」は生まれなかった!?

ではここで、「自由化」そのものに目を向けたいと思います。一般的に産業の自由化は、どのような効果があるのでしょうか?

 

「自由化」というのは、「市場の開放」という意味を持ちます。開放された業界では、価格や付加価値が自由に設定できるので、よい意味での企業同士の競争が発生します。

 

企業は、競争に勝つために顧客のニーズを汲み取り、顧客目線でのサービスを生み出していきます。例えば、通信業界では、1985年の通信の自由化以降、長距離電話、ポケベル、携帯電話、電子メール、動画配信などの新しいサービスが次々と生まれ続けています。

 

また、鉄道業界では、国鉄が民営化し、JRとなってから、それまで以上にサービスがよくなったと感じます。駅は、利用者の目線に合わせて整備され、より快適に清潔になり、案内掲示板は誰が見てもわかるように見やすくなりました。切符の種類や旅行プランも多様になりました。

 

近年で最も目立ったサービスは、電子マネーのSuica(スイカ)の導入です。もし、国鉄としてひとつだけの組織のままであれば、他者と比較されることもなく、また競争する必要がありません。サービスが、これほど向上したかは疑問です。

 

顧客のニーズを捉えた「価値創造」が求められる時代に

空に目を向けると航空業界も昔は、国営企業が独占していました。現在は、国内線はJRの新幹線とサービス競争し、航空会社間では、JAL、ANA、格安航空会社間で競い合っています。

 

国際線では、海外の航空会社と切磋琢磨しています。早割・特割など航空券の種類が多様になり、空港や飛行機の座席が以前よりも格段に快適になっています。

 

このように、自由化された業界では、企業が知恵を絞り、顧客のニーズを捉えたサービスが生まれます。電力業界も自由化で活性化し、新しい事業が生まれてくると期待されています。これからは、電気の安定供給とともに顧客のニーズを捉えた新たな価値創造が求められる時代になったのです。

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