今回は、電力自由化に伴う新規参入に「魅力がない」と言われる理由を探ります。※本連載では、一般社団法人エネルギー情報センターの理事で、エネルギーとビジネスに関する執筆・講演活動なども行う江田健二氏の著書、『エネルギーデジタル化の未来』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、電力自由化の現況と、その将来性を探ります。

電力自由化は大きなビジネスチャンスのはずだが・・・

通信の世界では、1985年の自由化を皮切りに、携帯電話やインターネットが出現し、世の中を大きく変えていきました。

 

同じように、これから大きな変革が起こる電力業界ですが、ひとつのターニングポイントは、先ほどから述べている2016年4月の電力小売り全面自由化です。多くの企業が新たなビジネスチャンスを期待して参入し、現在では電力小売事業者が350社以上となっています。

 

自由化以前は、東京電力をはじめ10社しか存在しなかったことを考えると、とても大きな変化です。ところが、電力自由化を機に参入してきた企業の方々とお話をしていると「参入してみたけれど、電力ビジネスは、あまり魅力的ではなかった」と落胆している方が少なくありません。これは、どうしたことでしょうか?

 

具体的に、どのような理由があるのかみていきたいと思います。

発電する燃料費等がかさみ、利益が出にくい現状

1つ目は、「利幅が薄い」という指摘です。これは、他の業界と比較してみると、なるほど明らかです。

 

1985年に自由化され、爆発的に発展した通信業界は、初めに通信設備などのインフラに莫大な投資がかかります。しかし、全国に通信網をつくり終えれば、それ以降に必要となってくる投資が少ないという特徴があります。

 

例えば、通話時間に比例して料金が加算されていく通話契約がありますが、通信業者にとっては、利用者の通話時間が10分でも、3時間でも、通信網が配備されていれば、さほどコストに変わりがありません。利用者が通話すればするほど利幅が大きくなる、ということになります。

 

つまり、NTTドコモやau、ソフトバンクなどの通信会社大手は、当初に投資をして通信網を完成させてしまえば、それ以降は、高い粗利益率(製品の販売額から直接の製造原価を引いたもの)を維持しながらビジネスを進めていくことができます。実際にNTTドコモやau、ソフトバンクは、粗利益率が高く、業績が好調です。

 

それに比べて、電気事業者は、電力会社の顧客が電気を利用するたびに電気を発電する燃料費(燃料としては、石油や石炭、液化天然ガスなど)や電気を送る送電費用(託送料金)など、販売額の6~7割程度が原価=コストとして発生します。売り上げのわりには、利幅が薄い商売、つまり、あまり儲からない(儲かりにくい)商売だと考えられるのです。

 

この話は次回に続きます。

エネルギーデジタル化の未来

エネルギーデジタル化の未来

江田 健二

エネルギーフォーラム

「エネルギーのデジタル化は、今世紀最大のビジネスチャンス」と書くと、読者の皆さんのなかには、少し大げさに感じる方もいるでしょう。しかし、エネルギーにおけるデジタル化の波は、これまでのエネルギーの作られ方や利用方…

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