収入や支出の事実が確定した時点で計上
どの時点で売上になるのか。いつ費用に計上するべきなのか──これらも記帳や決算時に迷うポイントかもしれません。たとえば、「商品を納品したが、入金されるのは翌々月末になる」「仕入れをしたが、支払いは翌月末になる」といった場合、どうするべきか。全部の取引が現金払いならばカンタンなのですけれど・・・。
ここから、やや小難しいワードが登場しますが、しばしお付き合いください。
会計処理のルールに「発生主義」と呼ばれるものがあります。現金の入出金のタイミングに関係なく、収入や支出の事実が確定した時点の日付で計上する会計方法になります。
たとえば、10万円の商品を受注したケースで考えてみましょう。納品したのは4月末。10万円が入金されるのは、翌々月6月末とします。発生主義の基準で記帳すると、納品した4月末の日付で売上、売掛金を計上。6月末に入金された時点で、売掛金の入金(現金)を記帳することになります。
支払いの場合も同様で、4月末に原材料を仕入れ、実際の引き落としは6月末とすると、4月末で仕入れと買掛金を計上し、実際に支払った時点で、再度の記帳が必要となります。
しかし、「発生主義に則って毎月処理するのは大変」「わかりにくい」という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、「毎月は入出金ベースで記帳してもいいですよ」というのが私の考えです。繰り返し申し上げてきたように、会計業務、記帳は本業ではなく、あくまでも本業のお金の流れを把握し、決算・申告に備えるためのもの。そこにストレスを感じてしまうようでは、本末転倒です。
普段は入出金ベースで処理、期末に決算修正を
ただしOKなのは「普段」だけ。「確定申告時」には「発生主義」の基準に修正する必要があります。
以下のケースで考えてみましょう。
① 2015・12・20売上10万円……2016・1・20入金
② 2016・5・20売上20万円……2016・6・20入金
③ 2016・10・20売上30万円……2016・11・20入金
④ 2016・12・20売上50万円……2017・1・20入金
このような状況の時
●入金ベースでは ①+②+③の合計60万円になります。
●発生ベースでは ②+③+④の合計100万円になります。
ここで、普段は入金ベースで処理し、期末には決算修正を行うとすると、入金ベースで処理した「①+②+③=合計60万円」から、決算修正で前年の売上となる①を差引き、今年の売上である④を加算するわけです。この修正により、売上は「60万円-①+④=合計100万円」。発生主義のルールに則ったケースと同じ結果になります。
ここをウッカリと決算修正をせず、入出金ベースのままでいくと、税務調査で間違いなく指摘されることになってしまいます。その年に計上するべき売上や経費を、その翌年や前年に計上することを「期ズレ」と呼び、「期ズレ」を利用した課税逃れと見なされると、重加算税が課されることもある税務調査の要チェックポイントでもあります。
普段は入出金ベースで、決算時は売掛金・前受金や買掛金・前払金を確認すべし。慣れてきたら、発生ベースに完全に切り替えるもよし。まずは、自分がやりやすい方法で記帳と仲良くしていきましょう。