事業に必要な出費は、すべてが「必要経費」
帳簿をつける上で、多くの方が悩むのが「どこまで経費に入れていいのか?」ではないでしょうか。税理士という立場上、よく受ける質問の一つですが、答えは実にシンプルです。
「事業上、必要な出費のすべてが必要経費になります」
「なーんだ、そんなカンタンなことか」と思うかもしれませんが、では、何が事業に必要な出費と判断されるのか? 残念ながら、そこに決まった正解はありません。ザックリといえば、「この仕事のためには、この経費を使う必要がある」としっかりと主張できるか。税務調査などでチェックされた際にも、きちんと説明がつくのか。そのあたりが、基準になるといえるでしょうか。
たとえば、「事業に必要な視察旅行」とするならば、その旅費は経費になりますが、「単なる物見遊山の旅」なら、経費に入れるのはNGです。「何がよくて、何がダメなのか」は、事業の内容や置かれている状況、さらに額の妥当性についても判断が異なるわけです。
経費項目の具体例と注意点
下記の図表に、一般的に経費として認められる項目を挙げました。とくに注意が必要なものについて見ていきましょう。
[図表]一般的な必要経費の一覧表
1 租税公課
言葉は難しいですが、ようは税金のこと。ただし、経費にできるのは、事業税、消費税など事業に関連しているもののみ。「自宅兼事務所で仕事をしている」「自分の車を仕事にも使っている」場合の固定資産税、自動車税などは、事業に使っている割合(時間や日数など)で按分します。事業主自身にかかる所得税、住民税、相続税などは経費にできません。
2 荷造運賃
売り上げた商品、製品を送る際の荷造り費用や発送費用。段ボール箱、包装紙、ひも、ガムテープ、郵便小包費、バイク便など。多額でなければ、次の通信費に含めても構いません。
3 通信費
2の売上に関する荷造り費用など以外の、請求書や資料を送付した運送・郵送料、電話代、インターネット料金などがあたります。
4 旅費交通費
スイカなど、プリペイドカード類を購入した時は、原則としてカード購入時に一括して経費にします。コンビニでの買い物などにも使っている場合は、カード引き落としの場合はカード明細、あるいは駅の自動券売機などで明細を出し、交通費部分のみを計上します。
5 接待交際費
取引先との飲食や手土産や慶弔金など、仕事上のお付き合いに関する費用です。法人の場合、経費にできる接待交際費は1回1人当たり5000円までという上限がありますが(中小法人の場合、現在は年間800万円までOK)、個人事業主の場合は、全額認められます。ただし、取引先と一緒であることが条件なので、出張などで一人で食事した場合の飲食費は経費に入れることはできません。
6 福利厚生費
同じ飲食でも、従業員のための出費は、福利厚生費になります。たとえば、残業時の食事代、忘年会の費用(一次会まで)などです。社員旅行(4泊5日以内などの条件あり)、慶弔費なども含まれますが、支給限度額の条件が決まっているものもあります。
7 修繕費
通常の維持管理、原状回復のための支出であり、金額が20万円未満、3年以内の周期で行われている改修、改装、修理などがあてはまります。新たに機能を加えたり、機械の性能や価値を上げたりする修理については、修理費用を取得価格に算入し、減価償却していくことになります。
8 消耗品費
文房具やオフィス家具、電気機器、パソコン関連機器など。青色申告の場合は、一定の要件のもと、30万円未満までは必要経費にできます(年間の合計額300万円まで)。白色申告の場合は、10万円未満が該当します。
9 給与賃金
青色申告者の場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出すれば、生計を一にする家族や親族に支払った給与を、全額経費にできます(白色申告の場合は、適用、額に制限あり)。
10 地代家賃
事務所や店舗を借りた場合の家賃は全額経費にできます。自宅兼事務所の場合は、事業で使っている割合で按分します。