前回は、世界的な民泊ブームを牽引している「Airbnb」の現状を取り上げました。今回は、「Airbnb」設立のきっかけについて見ていきます。

ヨーロッパで古くから根付いていた「B&B」

多くの一般的な日本人にとって、個人宅に泊まる民泊のスタイルはまだまだ馴染みが薄く、物珍しく思えるかもしれませんが、実はヨーロッパでは同様の宿泊スタイルが古くから存在していました。〝Bed & Breakfast(B&B)〟がそれです。

 

「B&B」はその英文名が示しているように、「寝る場所」と「朝食」だけを提供する簡易な宿泊所のことです。英国政府観光庁のオフィシャルサイトでは、B&Bの設備等について以下のような紹介がなされています。

 

「ゲストハウスは、イギリスの安い宿泊施設のタイプとして一番よく知られているでしょう。この建物は一般的には、個人の家や農場です。宿泊施設や設備はシンプルですが(たとえば、ベッドルームにはテレビ、電話、続きのバスルームがない場合があります)、最高クラスのゲストハウスは非常に洗練されています。料金には朝食が含まれます。一般的には伝統的なイギリスのフライ料理ですが、通常はそれ以外も選択できます。」

 

フランスでは〝シャンブル・ドット(Chambre d, hôte)〟と呼ばれるなど国によって呼び名の違いはありますが、民家に泊まるB&Bの文化は欧米の人たちに広く親しまれており、長期のバカンス旅行などで盛んに利用されています。世界最大の旅行サイトとして知られるトリップアドバイザーの調査では、イギリスの旅行者の間ではホテルよりもB&Bに宿泊した人の満足度の方が8.8%も高いという結果が出ているほどです。

設立当初の社名は「Air Bed & Breakfast」

ちなみに、前述したAirbnbの社名もこの〝B&B〟に由来しています。同社の設立者の一人、ネイサン・ブレチャージク氏は、2014年の訪日時に受けたインタビューの中で次のように述べています。

 

「当時、失業中だった私の友人のジョンが、デザインカンファレンスに参加するためにサンフランシスコの宿をとろうとしたのですが、予算オーバーで頭を悩ませた結果、開催地在住の友人ブライアン宅にジョンが使っていたエアーベッドを持ち込み、B&Bとして他の参加者にも貸し出すことを思いついたんです。」(マイナビニュース「旅行者とホストを結ぶ『Airbnb』が日本へ本格進出! ホテル以上の楽しさを」より)

 

この「エアーベッド(Air Bed)」と「Bed & Breakfast」をかけわせて「Air Bed & Breakfast」という設立当初の社名が生まれ、それが後に現在名である「Airbnb」へと改められたのです。

 

[図表]B&Bは広くヨーロッパ各国で広く利用されている

出所:スイス政府観光局ホームページ
出所:スイス政府観光局ホームページ

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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