「違法な運営」が横行する日本の民泊ビジネスの現状

前回は、「空き家問題」の解決策としても期待される民泊について取り上げました。今回は、「違法な運営」が横行する日本の民泊ビジネスの現状について見ていきます。

民泊は間違いなく「ホテル不足」の切り札に

「ホテル不足」の問題について確認していきましょう。

 

2006年の観光立国推進基本法制定、2008年の観光庁設立、2012年の観光立国推進基本計画の閣議決定など、日本はここ数年来、観光業を国の成長の一つの柱にしようと〝観光立国〟の実現を目指してきました。とりわけ、大きな力を注いできたのがインバウンドの推進、外国人観光客の積極的な誘致・取り込みです。政府は、訪日外国人旅行者数を2020年初めまでに2500万人にするなど具体的な数値目標を掲げ、訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)をはじめとする数々の誘致策を展開しました。

 

そうした国の積極的な取り組みのかいもあって、訪日外国人の数は右肩上がりで増え続けています。2013年に1000万人を突破した後、2014年には1341万人、2015年には1974万人と2年間でほぼ倍増しているのです。

 

しかし、一方では、このような海外観光客の急増を受けて、ホテル・旅館の供給が大きく不足しています。観光庁によると、2015年の国内の延べ宿泊者数は5億408万人を数え、初めて5億人を超えました。一方、全国の宿泊施設数は約5万件で減少傾向を示しています。客室稼働率は2010年の調査開始以来最高の60.3%を記録し、東京都や大阪府では平均80%を超えています(稼働率が80%になればほぼ満室といわれています)。そのために都心のホテルは非常に予約が取りづらい状況に陥っており、宿泊料金も高騰しています。

 

しかも、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えています。観光客のさらなる急増は必至であり、現在、建設中のホテルを見込んだとしても、全体で約1万室が不足するといわれています。

 

そこで、今後さらに逼迫することが確実なホテル需要の受け皿として、民泊の積極的な推奨が強く唱えられているのです。実際、先に触れたようにリオデジャネイロオリンピックでは数万の人たちが個人の住まいに宿泊しています。また、2012年のロンドンオリンピックでも慢性的なホテル供給不足の対策として民泊の規制が緩和されています。日本でも、後述するように花火大会や阿波おどりのような地方の名物祭りなど大勢の観光客が集まるイベントの際には「イベント民泊」という形で民泊がホテル・旅館の代替手段としてすでに活用されており、効果をあげています。そうした過去の実績から見ても、民泊がホテル不足の問題を解決する〝切り札〟となることは間違いありません。

 

[図表]訪日旅行者の推移

 

現在の民泊の多くがヤミ」・・・様々なトラブルの温床に

このように民泊には、その利用者、すなわちオーナーとゲストそれぞれの個人的なメリットにとどまらず、経済の活性化や、空き家問題、ホテル不足の解消など公益的な意義や役割があることも認められています。民泊という仕組みが、非常に大きな社会的価値を持っており、国民全体に多大な利益・恩恵をもたらす可能性を秘めていることは間違いありません。

 

しかし、その一方で、現状の民泊のあり方は必ずしも理想的なものとはいえず、様々な課題を抱えていることも否定できません。「どのような課題があるのか」また「どのように解決すべきか」については書籍『民泊ビジネスのリアル』第3章以降で詳しく論じますが、ここで指摘しておきたい何よりも大きな問題は、現在、運用されている民泊のほとんどが法に反した〝ヤミ民泊〟であるということです。

 

冒頭で触れたように、たとえ自宅であっても、不特定多数の人からお金を取って宿泊させる場合には、旅館業法をはじめとする法律のルールに従うことが必要になります。しかし、大変残念なことに、今現在、きちんと真面目に法律を守って民泊を行っているケースはごくわずか、おそらく全体の1割にも満たないといわれています。Airbnbで紹介されている物件もその大半は、本来必要な旅館業法上の許可を得ていないはずです。

 

そして、そうした〝ヤミ民泊〟の横行は、書籍『民泊ビジネスのリアル』第2章で具体的に取り上げるような様々なトラブルの温床になっており、民泊全体がマイナスのイメージを持たれる要因や、ホテル・旅館業界が民泊に拒否反応を示す原因にもなっているのです。

とまれる株式会社 代表取締役

京都大学在学中、株式会社ガイアックスを起業。上場に伴い退社したのち、楽天株式会社に入社、プロデューサーとしてMyRakuten等を担当。2013年より株式会社百戦錬磨に参画、取締役に就任。IT業界に精通している立場から観光業に携わったことで〝違法民泊〞の横行に強い問題意識を持つようになる。2013年にとまれる株式会社を設立、代表取締役社長に就任。国が進める国家戦略特区構想のアイデア公募に、空室物件と宿泊者をマッチングし、観光立国化と不動産価値の向上も実現できる民泊の仕組みをいち早く提案した。2013年末に提言が採用され特区法13条が成立、2014年4月からは他社に先駆けて特区民泊事業をスタートさせた。現在は「STAY JAPAN」を運営し、民泊オーナーと旅行客のマッチングを推進している。

著者紹介

連載大ブームの陰で「違法」な運営も横行 民泊ビジネスの課題と現状

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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