前回は、民泊流行の背景にある「シェアリング・エコノミー」の広がりについて取り上げました。今回は、「空き家問題」の解決策としても期待される民泊について見ていきます。

国内住宅のうち13.5%が「空き家」

民泊は日本が現在抱えている二つの大きな社会問題を解決する手段としても注目をあびています。すなわち、民泊の推進と普及によって「空き家問題」と「ホテル不足」の解消が図れるという議論が政府や専門家などの間で活発に行われています。まずはじめに、「空き家問題」の中身から見ていきましょう。

 

周知のように、現在、日本は人口減少時代を迎えています。2008年の1億2808万人をピークに、人口は減少の一途をたどっており、2016年10月現在は1億2693万人にまで落ち込んでいます。将来的には1億人を割ることが確実視されており、このままのペースで減り続ければ2100年には6485万人に半減するとの試算もあります。

 

空き家問題は、このような日本の危機的ともいえる人口減少を背景として浮かび上がってきました。2013年の時点で、国内の住宅総数に占める空き家の割合(空き家率)は13.5%に及んでいます。野村総合研究所の推計によれば、空き家率は今後さらに上昇し、2033年には、現在の2倍を超える30.2%にまで達します。

「地方創生」の観点からも有益な試みに

そもそも、空き家の増加が問題視されるのは、家に人が住まなくなり放置されることによって以下のような弊害がもたらされるためです。

 

① 地域への悪影響
手入れされなくなった空き家は汚れる一方ですし、不法投棄されたゴミや外壁の落書きもそのままの状態となるため地域の景観が破壊されます。さらに、庭には雑草が生い茂り害虫が発生したり、屋根裏などに害獣が巣をつくるおそれもあります。

 

② 震災時に人身被害が発生する危険
老朽化した建物や塀は地震によって倒壊する可能性があるものの対策が施されないため、震災時に人身被害をもたらす危険があります。

 

③ 犯罪の増加
敷地内に不審者が侵入したり、建物に放火されるなど、空き家の存在は犯罪を誘発するといわれています。

 

こうした空き家問題のもたらす人身被害等のリスクを防ぐために、国は、2015年に空き家対策特別措置法を施行し、倒壊の恐れや景観を著しく損なう空き家を「特定空き家」と定義し、市町村が所有者に除去や修繕を指導、勧告、命令できるようにしました。また、特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になるなどの税制改正も行われています。

 

そして、これらの法的な対策が進められている一方で、空き家問題への民泊の活用が、すなわち「空き家を民泊として貸し出せば、オーナーにはお金が入るし、空き家問題も解決できるので一石二鳥だ」という主張が唱えられているのです。使われていない遊休資産の積極的な利活用を図ることは、まさに前述したシェアリング・エコノミーの精神に合致するものといえます。とりわけ地方の空き家を民泊によって再利用することは、「地方創生」の観点からも大変に有益な試みとなるはずです。

 

[図表]総住宅数、空き家数及び空家率の実績と予想結果

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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