前回は、民泊の遵法性を判断する基準について解説しました。今回は、営業許可を取らない「ヤミ民泊」の現状と法的リスクについて見ていきます。

違法行為と知りつつ行っている人は多い

旅館業の判断基準から見れば、現在、日本で一般的に行われている民泊行為、すなわちAirbnbなどの仲介サイトで募集した宿泊者を自宅や借りた部屋などに泊まらせ、宿泊料を受け取っている行為が「旅館業」に該当することは明白です。したがって、営業許可を取らずに民泊を営むことは、原則として違法となることを免れないでしょう。

 

とはいえ、旅館業の許可を得るのは決して容易なことではありません。書籍『民泊ビジネスのリアル』第3章で詳しく触れますが、最も取りやすい簡易宿所の許可にしても、「客室の延床面積は、33平方メートル以上でなければならない(宿泊客が10人未満であれば、1人当たり3・3平方メートルでも可)」「2段ベッド等を置く場合には、上段と下段の間隔はおおむね1メートル以上」など数多くの細かな要件を満たさなければなりません。また、申請から許可が下りるまでには煩わしい手間や多くの時間、少なからぬ費用を要します。

 

そのために、はなから「とてもムリだ」と諦めたり、あるいは「面倒だ」「お金がかかるのは避けたい」と考えて、あえて営業許可を取らずに、違法行為だと知りながら民泊を行っている人が大勢いるのが現実なのです。

許可を得ずに旅館業を営んだ者は6カ月以下の懲役も

他方で、旅館業法の存在を知らずに、つまりは違法な行為だとは知らずに、民泊を営んでいる人もいます。違法性を認識している、いないにかかわらず「法の不知はこれを許さず」が日本の刑法の大原則です。つまり「法律があるとは知らなかった」という言い訳は通じません。

 

旅館業法では、同法の許可を得ずに旅館業を営んだ者に対して6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金を科すと定めています。果たして、今現在、〝ヤミ民泊〟を行っている人たちのどれだけが、自分が〝前科持ち〟になる可能性があることを承知しているでしょうか。あるいは、その覚悟を持っているでしょうか。警察官から逮捕状を目の前に突き付けられたときに後悔しても、後の祭りなのです。

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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