「息子に頼りきりだった」夫婦の生活の立て直し
「息子には悪いことをしたと思いました。でも、家の中を他人に見られるのも嫌だったんです」
信夫さんは、片づけが必要だと薄々感じながらも、長年暮らしてきた家の状態を指摘されることに抵抗がありました。
一方、文子さんは別のことを気にしていました。
「息子が来るたびにゴミをまとめてくれるので、いつの間にか、それを当てにしていたんです」
亮介さんは、実家を訪れるたびに重いゴミ袋を運び、古紙をまとめていました。夫婦が片づけを先延ばしにするほど、息子の負担が増えていたのです。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、現在の住まいに問題を感じている人のうち、回答項目として「住まいが古くなり、いたんでいる」を挙げた人は全体の29.5%、「段差や階段等があり使いにくい」は12.7%でした。高齢期の住まいでは、建物の状態や身体への負担が課題になることがわかります。
また、同調査では、地域に住み続けるために必要なこととして「家族や親族の援助」を挙げた人が41.4%に上っています。家族の支えを必要とする場面がある一方、援助する側の生活にも配慮が欠かせません。
10月に入り、文子さんは地域包括支援センターに電話をかけました。膝の痛みで掃除が難しくなっていることや、家の片づけが進まないことを相談したのです。
相談員からは、家事支援サービスの利用や、身体の状態に応じた介護保険の相談窓口について案内を受けました。
夫婦はまず、民間の家事代行サービスを月2回利用することにしました。1回2時間で約8,000円。月1万6,000円の支出になりますが、掃除やゴミの分別を手伝ってもらえることが決め手でした。
さらに、和室にたまった不用品は、自治体の収集制度と民間の不用品回収を組み合わせ、約7万円かけて処分しました。
「お金はかかりましたが、息子に全部やってもらうよりいいと思いました」
その後、信夫さんは亮介さんに電話をかけました。
「この前は悪かった。片づけを始めたから、今度見に来てくれないか」
亮介さんは少し間を置いて、「片づける気になったならよかった」と答えたそうです。
家の中がすべてきれいになったわけではありません。それでも、ゴミをため込まないための仕組みができ、夫婦は以前より落ち着いて暮らせるようになりました。
高齢期の生活では、身体の変化に合わせて家事の方法を見直す必要が生じます。家族が手伝える範囲には限りがあるため、地域の相談窓口や民間サービスも活用しながら、無理なく暮らしを維持できる方法を考えることが大切です。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

