放置すれば税金が6倍に? 空き家に潜む「見えない維持コスト」
地方都市にある実家を相続した50代の会社員A氏は、活用方針を決められないまま放置。当初は「将来的に誰かが使うかもしれない」と考えていたものの、結果として年間30万円超の固定資産税や草刈りの外注費が発生し続けました。
やがて老朽化が進んで倒壊の危険が生じ、最終的には数百万円にのぼる解体費用の捻出を余儀なくされました――このような事例は、決して特殊なものではありません。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高を更新しました。使われない空き家の急増は、いまや日本全体が抱える深刻な問題です。
不動産を所有し続ける限り、固定資産税や都市計画税、維持管理費などの保有コストは毎年確実に発生します。さらに近年、税制面での優遇措置にもメスが入りました。
2023年12月に施行された「改正空家等対策特別措置法」により、適切な管理が行われていない「管理不全空家」に対して行政指導が行われるようになったのです。改善勧告を受けると「住宅用地特例」から除外され、固定資産税の負担が最大で従来の6倍に跳ね上がるリスクがあります。
経済的な観点から見ても、利益を生まない資産の保有は明らかな機会損失。毎年の維持コストが出ていくだけでなく、その資産を現金化して運用できていれば得られたはずの利益まで逃しているからです。
加えて、建物の老朽化による資産価値の下落も避けられません。放置が長引くほど建物の価値はゼロに近づき、重い処分コストだけが残る現実を直視しなければなりません。
「分けにくい」不動産を現金化…泥沼化を防ぐ「換価分割」とは
実家を相続したB氏の家庭では、長男が「思い出のある家を残したい」と主張する一方、遠方に暮らす次男は「維持費がかかるため現金化したい」と訴え、協議が完全に暗礁に乗り上げました。維持費の負担割合を巡って兄弟仲は悪化し、解決までに3年以上もの歳月を費やしました。
不動産は現物での分割が極めて困難な資産です。最高裁判所『司法統計年報』によると、家庭裁判所で調停・審判が行われた遺産分割事件のうち、遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約75%を占めています。「大きな財産がないから揉めるはずがない」という思い込みは、現実は真逆なのです。
遺産の大半が実家ひとつだけという場合、きれいに切り分けることができず、相続人の対立が泥沼化しやすくなります。こうしたトラブルを未然に防ぐ現実的な選択肢が「換価分割」です。不動産を売却して現金に換えた上で、その代金を相続人同士で分け合う方法です。
不動産をそのまま残す「現物分割」や、誰か1人が引き継いで他の相続人に現金を払う「代償分割」と比べ、換価分割には大きなメリットがあります。資産価値が1円単位で目に見えるため、不公平感のないすっきりとした遺産分けができます。共有名義にしてトラブルを先送りするリスクも回避できるのです。
相続税の納税資金に困る場合でも、あらかじめ現金化しておけば、自分のお金を切り崩すことなくスムーズに納められます。感情論を抜きにして納得のいく遺産整理を進める上で、「現金化」は最も確実な処方箋といえます。

